「大抵いつも予約で埋まってしまいます」という吉野さんの施術。身体だけでなく心も癒される

 内閣府の調査によると、60歳から69歳までのシニア層の就業率は今や50%を超えている。“生涯現役社会”が強まっているが、70代や80代となれば働くことに不安を覚える人も少なくないだろう。

 そこで話を聞いたのが、セラピストとして働く吉野タカ子さん。体力は?いつまで働くの?ホントの気持ちとは?

月に予約が60件以上、遠方からも訪れる

「いろんな人と話ができて、小さな幸せを感じる」

得意メニューは、ボディケア。20分コースから、60分コース、100分コースまでやっていますよ!

 大分県別府市の『ラフィネえきマチ1丁目別府店』で、セラピストとして働く吉野タカ子さん。

 全国720店舗以上あるラフィネグループのセラピストは4500人以上(グループ企業も含む)で、吉野さんは最高齢。この道37年の大ベテランで、現在も週5日、朝11時から夕方5時まで勤務する。

店に入ってきたときと、出ていくときではお客さんの顔が違う。元気になってくれるから、その後ろ姿を眺めるのが楽しみで頑張っています

同僚たちはみんな若い人だが仲が良く、食事に行くことも

 吉野さんは男女2人の子どもを持つシングルマザー。学校給食の調理師として働き、女手一つで子どもたちを育てた。この道に入ったのは40代半ば、趣味のバレーボールでケガに悩んでいたときのこと。

何かいい方法はないかと思っていたら、東京から整体の先生が来るということで、友達とみんなで習ったんです。それがきっかけになりました

 鍼灸(しんきゅう)の治療院で働きながら解剖学などを学び、全国療術師協会の研修で療術師の認定を取得。

 49歳のとき鍼灸の師が亡くなったのを機に、ラフィネのグループ会社が運営する大分市内の温泉施設のリラクゼーションルームで働き始める。施設の閉館に伴い、3年前に現店舗に移った。

 月に予約が60件以上入ることもあるという吉野さん。大分市外から通う客も多く、中には福岡、北九州、東京から足を運ぶファンも。

大抵いつも予約で埋まってしまいますね。ほとんどが常連さん。温泉施設のころからのお客さんがずっと離れないで今も来てくれています。私にとっては宝物です

 施術はまずカウンセリングからスタートし、状態に合わせたケアで身体を整えていく。確かな施術に加え、その明るく親しみやすい人柄も愛される理由。施術中はお客の悩みを聞くことも多いと話す。

その人その人、悩みがあったりする。やっぱり人に言えないものって持っていますからね。私はもう聞きっぱなしだけれど、みなさん安心したくなって来るのでしょう

 朝5時に起き、新聞に目を通すのが吉野さんの日課。出勤前は欠かさず神社に立ち寄り、「みなさんの健康と幸せのために」と手を合わせる。

 仕事場までは車で30分。免許を返納した今は、吉野さんの息子さんが送迎し、仕事をサポートしているそう。

息子のおかげで仕事を続けていられます。ありがたいね

仕事が大好き!とにかく毎日が楽しい

 とはいえセラピストは体力勝負。予約が続くと休む暇もないが、疲れを感じることはないのだろうか。

まったくないですね。もともと仕事が大好き。自分で研究を続けていれば、それがまたいいほうにいってくれる。仕事が楽しいから、もう疲れたということはないし、本当に天職だと思います。いろんな人と出会えて話ができて、そういうことに小さな幸せを感じているので

 健康のため、休日は山に登ることもあるという。そのバイタリティーに圧倒される。

足が弱っていかないように、少しでも運動をしようと思って。健康ほど大切なものはないなって、この仕事を長くしていて思います

 ラフィネのセラピストに定年はなし。本人が望めば現役であり続けられる。「働ける間は働かせてくれるから、うれしいですね」と吉野さん。

今後の展望を聞いた。

まぁ、あと3年は働けるんじゃないかなと思っているけど。その後は何も考えてないよね。とにかく毎日が楽しいから。1人でも2人でも元気になって帰ってほしい。それだけです。ご縁がありましたら、みなさんもどうぞ別府に遊びにいらしてくださいね

吉野タカ子さん●リラクゼーションセラピスト。1942年生まれ。学校給食の調理師として女手一つで2人の子どもを育てる。46歳から鍼灸マッサージ院で働き始め、全国療術師協会の研修で療術師に認定される。2021年から『ラフィネえきマチ1丁目別府店』にて勤務。

吉野タカ子さん●リラクゼーションセラピスト。1942年生まれ。学校給食の調理師として女手一つで2人の子どもを育てる。46歳から鍼灸マッサージ院で働き始め、全国療術師協会の研修で療術師に認定される。2021年から『ラフィネえきマチ1丁目別府店』にて勤務。


取材・文/小野寺悦子