日々の食事を通して、効率的に腸にアプローチするには?
これまでに7000人以上の栄養相談や食事サポートを行ってきた管理栄養士の加勢田千尋さんに教えてもらった。
「食事に発酵食品を取り入れて、腸をしっかり活動させることが大切です。私自身、かつては太っていてひどい便秘や下痢にも悩みましたが、腸活食を始めて2週間で快腸に。体重は4か月で10kg減りました。
発酵食品は善玉菌の宝庫ですが、善玉菌のエサになる食物繊維やオリゴ糖と一緒にとることで活性化するため、食材の選び方がポイントです」(加勢田さん、以下同)
腸を元気にする「菌」と「エサ」を意識しながら、夏のお腹トラブルを予防し、不安を解消する具体的な食事を見ていこう。
水分不足は便秘のもと!腸が喜ぶ汁ものとは
まず汗をかくことで陥りやすい脱水状態と、それに伴う便秘には何を食べるべき?
「水分は糖、塩分(ナトリウム)と一緒にとることで腸管での吸収が促進されます。水分補給には梅干しや甘酒などを取り入れたり、水分と塩分、ミネラルを1杯でまかなえるみそ汁がおすすめです。
甘酒は米こうじタイプを選ぶと、乳酸菌やオリゴ糖を摂取できます。時短でみそ汁を作りたいときは、みそ玉が便利。もずくや乾燥わかめを足せば、食物繊維とみそに含まれる乳酸菌で腸が整います」(加勢田さん、以下同)
身体が脱水状態になると腸管の水分も不足し、便秘やコロコロとした硬い便になることも。そんなときは、ミネラルの一種であるカリウムや水溶性食物繊維を含む食材が役立つ。
「カリウムは、細胞内の水分量を調整する栄養素です。汗で失われたカリウムをきのこや豆類で補い、便をやわらかくして排便を促す水溶性食物繊維をもち麦やねばねば系の野菜でとりましょう。
どちらの栄養素も水に溶けやすいので、汁ものにして食べると栄養を逃しません」
効果アップにはごまをふりかけると◎。腸内の水分量を増やすマグネシウム、便のかさを増やす不溶性食物繊維が摂取できる。塩こうじやみそなどの発酵調味料で味つけすれば“菌とエサ”のバランスもとれる。
冷えを防ぐ強い味方は「発酵調味料&香味野菜」
次に気になるのが、クーラーで冷えがちな身体、内臓の冷えでお腹をこわさないための食事のとりかた。身体を温め、血流を促進する食材は積極的に取り入れたい。
「多くの発酵食品に含まれているビタミンB群には代謝を促進する作用があり、体内で熱をつくり出します。
夏野菜は水分量が多いので身体が冷えやすくなりますが、ビタミンB群が豊富な調味料を合わせれば冷え予防に。みそ、甘酒、すりおろししょうがを混ぜたディップは万能でおすすめ」
風味づけに、玉ねぎや長ねぎ、にんにくを刻んだりすりつぶして入れるのもいい。ビタミンB群とともに、血行を促進するアリシンがとれる。
炒めものや汁ものなら、しょうがを加えてゆっくり火を通そう。辛み成分のジンゲロールがショウガオールに変化し、血流を高めてポカポカに。
「冷たいものを食べるときは、しっかり咀嚼(そしゃく)して体温に近い温度にしてから飲み込むだけでも腸への刺激を和らげられます。腸活は便で結果を確認できるので、お通じを観察しながら自分の腸に合うものを見つけていきましょう」
善玉菌を増やす“みそ玉”の作り方
乳酸菌たっぷりのみそに、腸内環境を改善する働きがある、かつお節菌を含む削り節粉、さらに鉄分、カルシウム、ミネラル、食物繊維を含むごまをひとつに集約!
【作り方】
みそ100g、削り節粉10g、白いりごま20gを混ぜ、大さじ1ずつラップに取り分けて丸めるだけ。
保存期間は、冷蔵10日、冷凍1か月。みそ玉1個をお湯120mlに溶かせば腸活みそ汁になる。
腸活応援!夏食材+腸が喜ぶ♪ 最強の組み合わせ
あじのソテー&オクラソース
腸の炎症を抑えてスルッとなめらかなお通じに
材料と作り方(2人分)
(1)あじ(三枚おろしにしたもの)2尾に塩・こしょう各少々をし、片栗粉大さじ2をまぶす。フライパンにサラダ油大さじ2を中火で熱し、あじの皮面を3分焼いて裏返し、2分焼いて器に盛る。
(2)オクラ6本はゆでて薄切りに、みょうが1本は小口切りにし、ボウルでしょうゆ・甘酒(またはみりん)各大さじ1、酢大さじ1/2、ごま油小さじ1とよく混ぜて(1)にかける。
《ポイント》あじに含まれるDHA、EPAが善玉菌を増やして腸の動きもアップ。ソース仕立てにしたオクラは、水溶性食物繊維のペクチンが豊富。
ミニトマトとくるみのサラダ
塩分を排出!食物繊維を腸内細菌のエサに!
材料と作り方(2人分)
(1)ミニトマト10個はヘタを取って半分に切り、素炒りのくるみ20gは小さく砕く。
(2)ボウルにオリーブオイル・甘酒各大さじ1、レモン汁小さじ2、塩ひとつまみを入れて混ぜ、(1)をあえる。
(3)器に盛り、お好みでレモンの薄切り・かいわれ菜各適量を添える。
《ポイント》腸内細菌が苦手な塩分をトマトのカリウムで排出。食物繊維とオメガ3脂肪酸(α-リノレン酸)を含むくるみで腸内環境をサポート。
夏のお腹トラブル予防メニュー
きのこともち麦の中華スープ
不足しがちなカリウムは豆ときのこで汁ごといただくのが◎
材料と作り方(2人分)
(1)にんじん1本はせん切り、長ねぎ1本は斜め切りにし、しめじ1パックは石づきを落として小房に分ける。
(2)鍋にだし汁3カップ、乾燥もち麦30gを入れて加熱し、沸騰したら(1)を入れて15分煮込む。
(3)もずく80g、ゆでた枝豆30gを加え、塩麹大さじ3、酢大さじ2、オイスターソース小さじ1で味をととのえ、強火にして溶き卵2個分を流し入れる。
やさしいスパイスカレー
身体を温めるシナモン、ココアパウダー、しょうがをきかせて
材料と作り方(2人分)
(1)玉ねぎ1個は薄切り、にんじん1/2本は乱切り、かぼちゃ1/8個はひと口大、なす1本は輪切りにする。にんにく・しょうが各1片はそれぞれみじん切りにする。ドライプルーン3個は種を取って小さく刻む。
(2)鍋にサラダ油大さじ1、(1)のにんにく・しょうがを入れて中火で熱し、香りが立ったら(1)の野菜を加え、ふたをして10分蒸し煮にする。野菜がしんなりしたら合いびき肉300gを炒める。
(3)カレー粉大さじ2弱、ココアパウダー大さじ1、シナモン小さじ1、(1)のドライプルーン、トマトピューレ40g、米粉大さじ3を加え、粉っぽさがなくなるまで炒める。水500mLを加えて15分煮込み、しょうゆ大さじ1、塩小さじ1で味をととのえる。
夏野菜の酒粕グラタン
ストレスを減らし、腸の働きを促して便秘解消
材料と作り方(2人分)
(1)黄パプリカ1個はひと口大に切り、なす1本、ズッキーニ1/2本はそれぞれ1cm幅の輪切りに。
(2)フライパンにサラダ油大さじ1を中火で熱し、(1)を入れて塩少々をふる。5分ほど炒め、耐熱皿に移す。
(3)鍋に酒粕80g、豆乳1/2カップを入れて弱火にかける。混ぜながらペースト状にし、みそ大さじ1を混ぜる。
(4)(2)に(3)をかけ、ピザ用チーズ30gをのせる。200℃に予熱したオーブンで10〜15分、焦げ目がつくまで焼く。
《ポイント》パプリカとなすの抗酸化ビタミンでストレスへの抵抗力を高め、酒粕のレジスタントスターチで腸のぜん動運動を活発に。排便力UP。
教えてくれたのは……加勢田千尋さん●管理栄養士、一般社団法人 CHO-JIN食育教会代表理事。独自の食事法で不調を解消した経験をもとに腸の専門学校「CHO-JIN食育学校」を運営。著書に『「やせ玉」腸活ダイエット』(主婦と生活社)がある。
取材・文/廣瀬亮子 料理監修/加勢田千尋 レシピ考案/津崎みく(管理栄養士)