同じ年齢でも若く美しく見える人もいれば、老けて見える人もいる。元気でイキイキしている人もいれば、体調不良でひきこもりがちな人もいる。その差はどこにあるのか? 医学ジャーナリスト・松井宏夫さんは「元気で長生きできる生活習慣を実践すること」だと言います。医師の北條元治先生も「ほんの少しの生活の見直しが大きな差になります」と口をそろえます。

 北條先生と松井さんが語った、「健康で長生きするために今日からすぐに始めてほしいこと」とは。

「40代以降はいい習慣を身につけ、健康寿命を延ばしてほしい」(写真左・松井宏夫さん)、「きれいになりたいという気持ちが、きれいにしてくれる」(北條元治先生)

健康情報が多すぎて溺れている

北條 今日は、健康のためにどうしたらよいかというお話をするわけですが、それにしても、健康情報が多すぎますね。善玉菌を増やすのにヨーグルトがいいとか、身体を温めて免疫力を上げようとか……。これがいい、あれがいいが次々に登場し、みんな迷子になってしまっているんだなあと感じています。

松井 誰しも、元気で長生きしたい。女性の場合は、若くきれいでいたいという願望もあるでしょう。

北條 どうも目的と手段がごっちゃになってる人が多い。例えば、何のためにやせるのかを考えずに、やせることが目的になってしまう。おかしなたとえですが、貯金は好きなことをやるためにするんだけれど、いつの間にか残高が増えることが喜びになるのと似ていますよね。自分はどこを改善しなければならないのか、目的をはっきりと持てば、どうしたらいいのかもわかるはず。

松井 情報に振り回されないためには、その健康法の科学的根拠を確かめること。エビデンス(根拠)があるのか。信頼できるデータが示されているのか。僕は本の中で「貧乏ゆすりが死亡リスクを下げる」と紹介しています。なんだか怪しい感じがするかもしれませんが(笑)、これはイギリスの女性1万2778人のデータで立証されています。

北條 逆に何もしないという人がいますが、それは違う。私はよく言うのですが「エステに行くからキレイになるのではなく、きれいになりたいという気持ちを持っているからきれいになれる」のです。

松井 そのとおりだと思います。今は太っていても、不摂生な生活をしていても、とりあえず元気だとしても、将来はどうなのか。みんな生きている間は元気で、そして「ピンピン、ころり」といきたいわけですよね。この記事を読んでくれている人、特に40代以上は、生活習慣病やがんにならないように、よい健康習慣を身につけ、実践してほしいと言いたい。

健康のプロがやっていること

松井 1度うかがってみたかったのですが、先生はどのような健康法をやられているのですか。あっと驚くようなことをやられているとか(笑)。

北條元治先生の著書『最高のビジネスパフォーマンスを実現する101の習慣』(秀和システム刊)。第一線で働き続けるには健康マネージメントは欠かせない。ストレスに負けない健康管理法を紹介。※週刊女性PRIMEの記事中にある書影をクリックするとAmazonの紹介ページにとびます。

北條 若いころは老いることが不安でしたね。思考能力の低下とか、ボケることが本当に怖かった。それが50代になって、事実、計算能力は低下するし、人の名前も忘れるし、「あれ」「それ」も多くなってきたけれど、こういうのも捨てたもんじゃないなって思うわけで。欲張りすぎないことが私の健康法かな。

 いちばんよかった時代の自分にしがみついていないで、今の自分を受け入れる。難しい本は読めなくなりましたが、逆に歴史本とかハウツー本を読むようになって、新しい自分との出会いになる。今の自分の能力の中で、好奇心を持っていれば、脳は若いときのようには働かなくても、それなりに活性化しますからね。

 あとは、腹八分目で食べすぎないことかな。

松井 僕はまず早寝早起き。月曜日にラジオの生放送があるので、4時半に起きて準備をして、7時に迎えが来ます。このパターンが毎日の習慣になっています。寝るのは10時ですね。

北條 それじゃあ、報道ステーションは見られない。

松井 ええ、NHKの9時のニュースを見たら眠ります(笑)。やめられないのはお酒。ビールが好きで毎日中びんで2本飲んでいます。健康にはよくないとわかっていても、これは譲れない。そのかわりバスやタクシーに乗らずに1万歩くらいは歩きますし、夕食時にはお米は食べない。トータルして考えればいいわけで。人生、楽しいことがなければ、何のために生きているのか。健康で長生きしたいけれど、お酒も飲みたい……。

やれることをやり続けるのが健康道

北條 病院に勤務していると、いろんな患者さんがいて、糖尿予備軍なのに放置していたり、何か変だとわかっていても放置している健康意識の低い人がいる。そういう人は生活習慣病になったり、心筋梗塞やがんで命を縮めてしまう。逆に健康意識が高い人は病気を予防できる。当たり前のことです。

松井宏夫先生の著書『長生き「できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社刊)。40種類に及ぶ生活習慣の秘訣を医学データに基づいて紹介。無理せず健康でいられる習慣がよくわかる。※週刊女性PRIMEの記事中にある書影をクリックするとAmazonの紹介ページにとびます。

松井 BMI=体重(kg)÷身長(m)×身長(m)が25以上で、高血圧や糖尿病などがある、あるいは腹囲が女性では90cm以上なら肥満症という立派な病気。病気なのだからやせなければいけない。ただし1か月で5キロ以上やせるとリバンドすることが多い。1か月で1キロから2キロやせれば1年で10キロ以上はやせられる。僕は10年で8キロやせましたが、無理をせずに続けることが、健康になる唯一の道だと思います。

北條 腹八分目で、バランスのよい食事をして、運動をして、タバコは吸わない。そうした健康のための本質を知って、コツコツと続けていく。これが大切です。

■北條先生の習慣
・腹八分目(昔から言われているが、内臓に負担をかけない)
・自分が基準(自分が快適かどうかで判断していく)
・梅肉エキス(お腹の調子がよくなる)

■松井さんの習慣
・22時就寝、4時半起床(健康にいいのは6時間~8時間。睡眠時間は削りません)
・彩り豊かな食事(丼飯のような一品だけの料理は避ける)
・年に1キロやせれば10年で10キロ減(つらいダイエットは続かず結果が出ない)

<プロフィール>
北條元治(ほうじょう・もとはる)◎東海大学医学部非常勤講師、形成外科医、医学博士、(株)セルバンク代表、RDクリニック顧問。弘前大学医学部卒業後、ペンシルベニア大学医学部で培養皮膚を研究。2005年に日本初となる「肌の再生医療」の専門医としてRDクリニックの開設に携わる。テレビ出演、セミナーなど幅広く活躍中。著書に『最高のビジネスパフォーマンスを実現する101の習慣』(秀和システム刊/1400円+税)。

松井宏夫(まつい・ひろお)◎医学ジャーナリスト。医学ジャーナリスト協会副会長、東邦大学医学部客員教授。中央大学卒業、『週刊サンケイ』の記者などを経て医学ジャーナリストとして独立。最先端医療やがん医療を精力的に取材。TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』の月曜8時枠にレギュラー出演中。朝日放送『みんなの家庭の医学』の監修も。著書に『長生き「できる人」と「できない人」の習慣』(明日香出版社刊/1400円+税)。