2階建ての実家は、すべての窓のカーテンが閉められていた。それでも長年住んでいる隣近所を騒がせたことを詫びるために、両親は律義にも、近所に電話をかけたという。
「あいさつの電話、というんでしょうか。お父さんはひと言、“言ってくれれば……”と悔やんでいましたね。“なんで相談してくれなかったんだ……”って。
お母さんは泣きながら、“とにかく頑張って元の生活に戻さないと”って言っていました。いい家族だと思います、本当に。起きてしまったことは取り戻せないけど、みんなこれからだと思って、前を向いて生きていくしかないですからね」
一家を知る別の住民は、涙ながらにそう明かした。
親に相談しなかった増田容疑者だが、昨年6月30日、ツイッターで《ずっと吐き気と頭痛と倦怠感が収まらないんだけどなにこれ》と驚いている。さらに同日《妊娠祝いよこせよ》と追記。翌7月1日には《だれでしょう》と、父親を示唆するようなツイートをしている。これらが妊娠初期のつぶやきであれば、その後、堕胎を決断する時間もあったはず……。
「いやぁ、誰も気づかなかったのかね。周りにいた人が気づかないっておかしいでしょう。頭がいいからって相談をしないのはだめ。親はダテに長生きしてないんだから、知恵をもらえばよかったのに」
と、近隣の主婦は首をひねる。同居していた姉にも、たまに帰省していた実家の両親にも、誰にも感づかれることなく妊娠生活を送り、出産を終え、増田容疑者はすべてをなかったことにできるとでも思ったのだろうか。
遺棄現場近くの住民は、
「20歳で子どもを産むことは恥ずかしいことじゃないわよ。ちゃんと育てればいい。でもね、今回は捨てたっていうことが問題だよ。しっかり罪を償ってこれからちゃんと生きていってほしい。悪いことを繰り返すようじゃだめよ。ただでさえ親に迷惑をかけているんだからね」
たとえ親には相談しにくいことでも、行政の窓口もある。生まれた子を預けることができる赤ちゃんポストだってある。看護という命に向き合う学問を専攻していたにもかかわらず、大切な小さな命をゴミのように捨てた。
罪を償い、その負い目と生涯向き合って生きることが、赤ちゃんへの罪滅ぼしだ。