どんな治療に使われるの?
さい帯血は有効性が認められている27疾病には届け出なく移植が認められている。これ以外の疾病にさい帯血を用いる場合は、届け出を行い、倫理委員会などで検討される。
(1)悪性リンパ腫(2)横紋筋肉腫(3)鎌状赤血球症(4)肝芽腫(5)急性白血病(6)血球貪食症候群(7)原発性免疫不全症候群(8)骨髄異形成症候群(9)骨髄増殖性腫瘍(10)骨髄不全症候群(11)骨肉腫(12)サラセミア(13)神経芽腫(14)腎腫瘍(15)膵がん(16)組織球性及び樹状細胞性腫瘍(17)大理石骨病(18)中枢神経系腫瘍(19)低ホスファターゼ症(20)乳がん(21)表皮水疱症(22)副腎脊髄ニューロパチー(23)副腎白質ジストロフィー(24)慢性活動性EBウイルス感染症(25)免疫不全関連リンパ増殖性疾患(26)ユーイング肉腫ファミリー腫瘍(27)リソソーム病
前出の竹田特任教授は次のように説明する。
「白血病のような血液のがんの治療に主に使用されています。白血病では抗がん剤や放射線治療を行うことで、造血機能を破壊し、新たに血液のもとを作り出す造血幹細胞を移植して治療を行います」
さらに、さい帯血の移植は臓器移植と同じくらい慎重に行うべきだと前置きをして、
「赤血球にA型B型O型と型があるように白血球にもHLAという型があって、他人のさい帯血を移植する場合には、これがある程度、合致している必要がある。そのためには事前の検査が必要です」
だが、型が合っていたとしても、移植した細胞が、宿主の細胞を攻撃しはじめるGVHDという病気が起こることも。これにより発熱や発疹、肝障害から、最悪、死亡することもある。
「GVHDが発症したら免疫抑制剤を使用することが必要になり、キチンとした施設でなければ対処することは難しい」(竹田特任教授)
民間バンクに保存するメリットは?
「純粋に将来の病気に備えることができるということです」(前出の清水代表)
民間バンクで保存されたさい帯血は、法律で定められた27疾病に対し血縁者のみが移植可能だ。
非血縁者では、HLA型が一致するのは数万分の1から数百万分の1とされる。その一方で、両親の場合は約1000分の1と高くなり、きょうだいの場合は4分の1で完全に一致する。ステムセル研究所では、保存した妹のさい帯血を姉の白血病の治療に使用したケースも。
前出の竹田特任教授は、
「公的バンクは他人の細胞ですが、民間バンクなら自分の細胞を移植することができるわけです。当然、生着もよくGVHDも起きにくい。研究が進めばさまざまな病気の治療法が確立されることが期待されます」
そして、実際に病気の治療のための臨床研究が行われていると続ける。
「高知大学では脳性まひの子どもに、自分のさい帯血を移植する臨床研究が進められています。海外では、脳性まひの子どもにさい帯血を輸注(点滴で注入すること)したところ、寝たきりだった子どもが、数か月後には身体を動かせるようになるまで回復したケースが多数報告されている。それ以外にも海外ではアルツハイマー病やI型糖尿病、自閉症の臨床研究も行われています」
事件は、さい帯血をめぐる悪い実情を浮き彫りにした。しかし、将来に向けて期待される側面もある。