「ゼロの状態のタレントを仕事が入る状態にするまでには、大変な労力とお金がかかります。売れたからといって、“誘われたから別のところにいきます”では、投資したお金を回収できず、ビジネスが成り立たないからです」(前出・佐藤弁護士、以下同)

タレント側の落ち度

 さらに佐藤弁護士はトラブルの原因のひとつとしてタレント側の落ち度も指摘する。

「契約トラブルは事務所が一方的に悪いという問題ではありません。きちんと契約書を読まず、トラブルになってから初めてちゃんと読むタレントがあまりに多い。そこで初めて“この権利は私じゃなくて事務所が持っているんだ”“え、いま辞められないの?”と気づいて相談に来る。事務所に入るときにしっかりと確認していないために、金銭面や芸名、移籍トラブルが発生してしまうのです」

 だからなのか、多くの契約トラブルは、事務所を移籍して新たな芸名をつけるなど、ケンカ別れのような状態で終わってしまうそう。

「私どもの団体は、お互いに利益があるような関係性に落とし込めるような提案を、事務所やタレントにすすめていきたいと考えております。ケンカ別れしてしまったら、事務所側は世間から“ブラック事務所”の烙印を押され、頑なに移籍を進めて独立したタレント側もなかなか仕事が来ない。イメージ的にテレビ局やスポンサーも使いづらくなってしまうのが現状ですから」

 古い慣習のままの契約がはびこっていては、おそらく契約トラブルはこれからもどんどん増えていくだろう。

「これまでの慣習に則った古い形ではなく、新しいビジネスモデルが必要になってきているのです。そのためにはタレントと事務所が、法律を盾にケンカするのではなく、対話と調和をし、お互いに利益のある落としどころを見つけていくべきでしょう。

 例えば、そのままの芸名で新しい事務所にいくのであれば、元の事務所にその使用料を支払うようなライセンス契約を、元事務所と新事務所の間で結ぶなど、今までにない契約が必要になってきています」

 情報バラエティー全盛の昨今。タレント、そして事務所も、もっと勉強しなければならないということか。

※2018年3月16日、記事の一部を修正しました。