何のための解散なのか
「安倍首相に見えていないのは、解散・総選挙をめぐるさまざまな思惑がすべて国民に見透かされていること。国民が気づいていないと思っているとしたら鈍感すぎます」
とジャーナリストの大谷昭宏氏は喝破する。
自民党総裁の安倍晋三首相(63)は28日召集の臨時国会冒頭で衆議院を解散し、10月10日公示、同22日投開票の日程で衆院選を強行する構え。任期4年満了まで約1年2か月残している。
小泉元首相の「郵政民営化解散」('05年)に代表されるように、任期前倒しで有権者国民の信を問うのだから選挙の争点ははっきりしていなければならない。ところが、税金をはたいて選挙を急ぐほどの理由は見当たらず、身内の自民党内からも「何のために解散するのか明確にする必要がある」(石破茂元幹事長)などと釘を刺される始末だ。
23日時点では、消費増税の使い道、北朝鮮への対応策、憲法に自衛隊の根拠規定を明記すること─などが争点として取りざたされている。
政治評論家の有馬晴海氏は「消費増税分の使い道について、教育無償化など全世代型の社会保障制度改革に費やすことを選挙で問うとしているが、それは後づけの理由にすぎない」と明かす。
「要するに確実に増税したいだけです。衆院選を来年まで待った場合、2019年10月予定の消費増税を“再々延期する”と言うしかなくなります。選挙で勝てませんから。
一方で3度目の延期になるのでリーダーの資質が問われます。絶対、増税したい財務省も黙っていないでしょう。どっちにしろ追い詰められるので、増税までまだ2年ある今のうちに解散し消費増税にお墨つきをもらいたいんです」
と有馬氏。