現代ならではのきょうだい事情

「家族社会学」を研究する高千穂大学の吉原千賀准教授は“現代ならでは”のきょうだい事情をこう話す。

「昔は5~7人きょうだいも珍しくなかったので、性格が合わない人がいても、ほかの人が仲介役となって調和がとれました。でも今は、少子化で人数が少ないぶん1度こじれると関係の修復が難しいと言えます」

 また、年長者である長男・長女の役割が曖昧になるにつれ、親の介護や財産をめぐってみんなが“平等”を主張するようになったこと、家族行事に強制力がなくなったことも仲の維持を難しくしているという。

「年に数回、家族が集う冠婚葬祭の機会に、昔は嫌でも顔を合わせなければいけませんでした。でも今は仕事を理由に参加しない人も増えました。ですから、意図的に連絡をとり合わないと、簡単に疎遠になってしまう時代でもありますね」(吉原准教授)

 そのため、かつてより、よい関係を保つためのメンテナンスが必要だ。

「今では、手軽にメールやLINEで連絡がとれますよね。常日ごろからきょうだいの関係性を確認する作業は必要。震災で、地縁、血縁ということが見直されたように、それを保つにはそれなりのコスト(手間)がかかるのはしかたがない。そしてきょうだいを頼る場合でも、一気に負担をかけるのはよくない。例えば、老後の負担ならば、友人や近隣、子どもやきょうだいというふうに分散させたほうがお互い気楽でしょう」

特別な記憶を共有するきょうだい

 吉原准教授は、高齢者へのインタビュー調査を通して、きょうだいの意外な役割にも気づいた。

「きょうだいは、親や配偶者、子どもではまかなえないものを共有する存在です。高齢になって、人生を振り返るとき、親が亡くなれば、結婚する前の20~30年の時間を共有できるのはきょうだいだけ。そのため、大人になってからのきょうだいは“潜在的なサポート源”と言える」

 冒頭の小林姉妹の姿にも、同じような関係性を感じとったという。

「人生の最終ラインが見えてきた高齢者のきょうだいは互いに助け合い、場合によっては一緒に暮らすこともあります。小林姉妹はもしかしたら、人生の危機を感じて、高齢者のきょうだい関係のようなことを、あの時間で過ごしていたのかもしれません

 吉原准教授は、老後の選択肢として、きょうだいと暮らすこともあるのでは、と提案する。

「きんさん・ぎんさんの、ぎんさんの娘さんも同居していた時期がありました。子どもたちは独立して、夫に先立たれたら、シングル・アゲインという状態になります。そんなとき、ふと“あら、あなたいたの?”ときょうだいの存在に気づくことがあります。まさに再会するんです。映画などでよく見るように欧米では、老後にきょうだいで同居することがあります。きょうだいとは、そういうことが自然にできる可能性をもつ稀有な存在でもあるんですよ」

<プロフィール>
◎磯崎三喜年さん
国際基督教大学教授(心理学)。人間心理、友情ときょうだい関係など、対人関係に潜む心理機制を追究。4人兄弟の間っ子

◎吉原千賀さん
高千穂大学人間科学部准教授。家族社会学、特に兄弟姉妹関係について関心を持って研究している。3姉妹の長女