ペットとして飼うには多くのハードルがある
一方で、国内でペット用に繁殖された個体も存在する。前出のツイッターで人気のカワウソちぃたん☆の飼い主は、数十年、カワウソ好きな気持ちを持ち続け、今年の春に、カワウソの繁殖を行う知り合いのエキゾチックアニマル専門店から手に入れたという。
「譲っていただいた方にある程度教えていただきましたが、飼育マニュアルはないので、自分で試行錯誤したり、工夫したりしています」
ツイッターではかわいい姿ばかりが目立つが、裏では相当飼育に苦労しているという。食料や光熱費などの経済的な問題、水遊び場所の確保、トイレのしつけ、ニオイ対策、大きな鳴き声、誤飲の注意、カワウソをみてくれる動物病院探し……など、そのハードルは挙げればきりがない。
「カワウソは個体によって大きく性格が違いますが、ちぃたん☆は穏やかな性格で非常に飼いやすい子です。しかし鋭い歯で噛まれることもあり、私も手が傷だらけです。あとは、体力があり余っているので、それに付き合うのが一番大変です。とにかく遊び好きで、起きている間はずっと遊んでいるので休憩なんてほぼありません。これを10年以上、毎日何時間もしないといけません。幸い私は自宅でできる仕事なので、ちぃたん☆と遊んであげられますが、留守にする時間が多い家では無理だと思います」
飼い主から見ても、ネットなどで性格のいい(比較的飼いやすい)カワウソを見て、安易に飼育に手を出すのは反対だと話す。
「密輸に関しても断固反対です。繁殖は難しいですが行っているペットショップもありますので、数年待ちはザラですが、しっかり国内ルートで買っていただければと思います。待つのは嫌だから密輸個体で、というのは最低だと思います」
ペット反対意見については、
「密輸のニュースだけを見たり、ネットの情報だけで全てのカワウソ飼育を反対といっている方は、国内でも繁殖個体がいること、そういう個体を大切に育てているペットショップや飼い主もいるというのを知ってほしいと思います。カワウソの飼育は大変ですが、しっかり準備すれば自宅でも可能です。でも、準備が整っていない方が飼うのは反対です」
取材を進める中で、カワウソをめぐってさまざまな立場や意見があることがわかった。しかし、命をモノのように扱う密輸問題は決して許してはいけない。ペット人気が急激に拡大している今、対策が迫られている。
「単にかわいい、飼いたい! という方向に行かずに、カワウソは世界的に数が減っている生き物であるとか、なぜ日本では絶滅してしまったのかを考えるきっかけにしてほしい」と、カワウソゥ選挙の背景について高宮さんは語る。カワウソを守るために何ができるか、ひとりひとりが考えなければいけないだろう。
(取材・文/小新井知子)