「こちらの言うことを聞かないのなら、早くシェルターから出ていってください。何があっても責任はとれないのでこの誓約書に一筆書いてくださいと言われました。すごくショックでした」(鈴木さん)
相談員の態度に不信感
桑島准教授は、支援の窓口となる相談員について、
「婦人相談員の対応はその資質に左右されるところが大きいのは確かです。被害者の相談をよく聞くことで問題の解決ができる場合も多い。ベテランの相談員ほど保護件数は少ないということもあります。
被害者の相談を聞く相談員の多くは非正規雇用で待遇も悪い。にもかかわらず、DVや虐待といった非常に重い事案を多数扱う。自治体によって違いますが、研修をキチンと受けさせてもらえなかったり、数年で異動となり経験が蓄積されなかったり、専門的な知識を持っていない人を配置している場合もある」
鈴木さんの対応をした相談員が数ある相談により疲弊していたのかは定かではないが、この対応はあんまりだ。
鈴木さんは結局、夫のもとへと戻ったが1年ほどで夫の暴力は再発。子どもとともに何度も家を追い出された。
「相談員の態度に不信感があり、絶対に相談には行きたくありませんでした。お金もなく仕事もしなければいけない、子どものこともある。警察に行けば執行猶予中の夫は刑務所です。でも家庭を壊したくない。そんな思いが交錯し、限界にきていました」
夫の身勝手な振る舞いに苦しめられても家庭を壊したくないと願う鈴木さん。決して特殊な例ではないと前出の須藤名誉教授は話す。
「電話相談でも、多くの女性は離婚を望んでいません。この問題は離婚して終わりというほど単純ではありません。しかし支援者側としては離婚していれば法律の適用がしやすく、生活保護や施設入所など、さまざまな支援を行える。婚姻状態にあるとその適用が難しく支援ができない苦しい状況もあるのです」
鈴木さんのケースでは公的シェルターで読んだ本で知った京都府にある支援団体『日本家族再生センター』を頼ることにした。連絡をとり、同センターのシェルターに子どもと一緒に身を寄せた。
'03年設立の同所はこれまで約5500件のDV事案のカウンセリングを行ってきた。
同所に届く相談メールには、シェルターへの不満を訴えるものが多い。