「この子はシャイなんですよ」と訓練中の犬に呼びかける岩屋課長
「この子はシャイなんですよ」と訓練中の犬に呼びかける岩屋課長
すべての写真を見る

新センターに殺処分室はない

 殺処分の一方、収容されたを新たな飼い主へと譲渡するのも保健所の役目。八木獣医師は、譲渡会の運営担当者だった。参加者に対し、

「動物を飼うということは最後まで責任を持つということ。動物は自分で生きることができない。飼い主が、その動物の人生を大きく左右するんです。1匹を飼っている人が2匹目を飼ったが、同士の相性が悪く、ケンカもする。散歩も別々で時間がかかる。引き取ってほしいと連れて来る方もいます」

 と包み隠さず伝える。

 神奈川県では未来を見据えた取り組みも行っている。

 1972年に開設された県動物保護センターは老朽化しているため、新施設を'19年4月に開設する予定だ。

「新たなセンターには、殺処分室はありません。殺処分ゼロを継続するのは難しいことです。私たちもいつまで続けられるかわかりません。少しでも命が失われることを防ぐためにも、動物愛護の拠点として、将来は動物も人間も幸せになれる施設を目指します」

 と同県保健福祉局で動物愛護を担当する松谷順子課長が明かす。現在、寄付を募っているが、目標の11億円に対し、現状は2億3万8014円(10月6日現在)。

 自治体によって、事情は違う。香川県では、昨年度、約1500件ものの殺処分を行わざるをえなかった。野が非常に多いためだ。

「野というと他県にも驚かれます。もともと飼い主がいないもので、どうしても殺処分せざるをえない。子どもが追いかけられた、通学路にたまっているという苦情をよくいただきます。成は人になれず、海外でも駆除対象です。しかし野でも子は順化しやすいため、人にならして譲渡をする取り組みを行っています。今年度は検討委員会を立ち上げました。検討し改善を図っていきます」(同県生活衛生課)

 一朝一夕に解決する名案がない殺処分。を保健所から引き取って飼えば小さな命を救うことができる。ただし、その命が尽きるまで、しっかり家族のように面倒を見ることが大前提だが。