法律が通ってみてわかったこと
安保法制は施行から2年がたついま、着々と整備が進められている。
例えば、ミサイル防衛。安倍政権は北朝鮮によるミサイルの脅威を強調、衆院選の争点にも掲げている。だが、金正恩の狙いは日本ではなく、「ミサイルの威力でアメリカを交渉の場に引き出し、対等な立場で交渉すること」(前田さん、以下同)にある。そのためアメリカ領グアム沖やハワイ沖へ向かう弾道ミサイルの発射を繰り返してきた。
このとき、日本のはるか700キロ上空をかすめる場合がある。
「上空700キロは日本の領空ではありませんが、アメリカからすれば、日本を対北朝鮮防衛の第一線にしたいという思惑がある。これまでは憲法のもと、アメリカがミサイルを撃ち落とすよう求めても突っぱねられたのですが、集団的自衛権を認めたことで、それを安倍さんがひっくり返してしまった」
昨年8月8日には当時の稲田朋美防衛大臣がミサイル破壊措置を命令、『Jアラート』(全国瞬時警報システム)が鳴り響き、日本からの核シェルターの注文が増えるなど物々しい。
「まさに集団的自衛権と戦争法ができた賜物です」
アメリカの軍艦の防護、燃料給油もすでに行われている。今年5月1日、海上自衛隊最大のヘリコプター搭載型護衛艦『いずも』が米イージス艦の防護を初めて実施。加えて4月以降、複数回にわたり海上自衛隊の補給艦が、米イージス艦に洋上給油を行っていたことが9月に発覚している。
「’14年に集団的自衛権が閣議決定された際、安倍首相は記者会見で、子どもを抱いたお母さんのイラストを引き合いにして、邦人輸送中の米輸送艦を防護するために必要なんだと説明していました。ところが法律が通ってみると、実際はアメリカの軍艦を防護している。いまでいう“フェイクニュース”です。国会で野党が目的や内容を追及しても、作戦上の問題や、アメリカとの関係があるからと口を閉ざして答えません」
国連PKOでは、『駆けつけ警護』が新たに追加。離れた場所にいる他国の軍隊や国連職員から救助要請を受けたとき、現地に駆けつける任務で武器使用が認められている。昨年11月に南スーダンPKOで命令が出され、実施されることはなかったが、隊員にかかるリスクは格段に高まった。