軍事に前のめりになる政治家たち

 合同訓練が盛んに行われるなど日米関係が強化される中、専守防衛の一線を踏み越えようとする動きが政治家にみられる。

「第2次安倍政権以降、日本の防衛大臣はことごとく戦争に前のめりになっています。政治家が軍隊を統制するシビリアン・コントロールを発揮するのではなく、むしろ自衛隊を実戦の方向にもっていこうとする」

 そう指摘するのは、元レンジャー隊員で、元自衛官と市民らで作る平和団体『ベテランズ・フォー・ピース・ジャパン』代表の井筒高雄さんだ。

「小野寺五典防衛相は、北朝鮮が米グアムに向けて発射した弾道ミサイル計画に対して、集団的自衛権の適用ができるかのように発言しました。集団的自衛権を行使するには、国民の生命や財産、自由や幸福がこのままでは守れないという『存立危機事態』と認定されなければならない。

 しかし9・11のとき、飛行機がビルに衝突するニューヨークを見て日本の危機だと思いましたか? アメリカが北朝鮮への反撃を表明したわけでもないのに

 こうした防衛相の発言は、北朝鮮から宣戦布告とみなされて偶発的に戦争が始まりかねない、と井筒さんは批判する。

現場に出るのは高卒を中心とした隊員。戦場から帰ってPTSDになったり、自殺したりするリスクを含めて、“こんな法律はないに越したことがないし、戦場に駆り出されたくない”というのが隊員の本音。

 同期だった隊員は、任務を遂行しなければならないと理屈ではわかっているが、忸怩たる思いがあり、揺れ動くと話していました。それを安倍首相や防衛大臣はきちんと酌みとってほしい」

 安保法制の本格的な運用が始まるのはこれから。軍事に前のめりになる政治家がいる限り、法が拡大解釈されるおそれはぬぐえない。

解釈改憲から明文改憲へ

 下の表のとおり、安倍政権下では特定秘密保護法、安保関連法、そして共謀罪と、国民の反対を押し切り重要法案が次々に成立してきた。この一連の流れは、「憲法改正に向けた動きであることは間違いない」と前出・前田さん。

【安倍政権が進めてきた主な安全保障政策】
・第2次安倍政権発足(’12年12月)
・国家安全保障会議(日本版NSC)発足。特定秘密に指定された情報を漏らした公務員や、情報に迫った市民らを処罰する特定秘密保護法が成立(’13年12月)
・集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈の変更を閣議決定(’14年7月)
・日米防衛協力のための指針(ガイドライン)を18年ぶりに改定(’15年4月)
・集団的自衛権の行使を柱とした安全保障関連法が成立(’15年9月)
・犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法が成立(’17年6月)

 井筒さんは、「戦争をするときに必要な3つの法律ができたことで、戦争法がコンプリートされたことになる。あとは何が必要かと言うと、この法体系を担保させるため、憲法の改正です」と断言する。