被害者か加害者か、勝者なのか敗者なのか

 あの記者会見を観ていて、「ホントよかったねぇ」と思う人も多いだろう。松居に共感してなのか、それとも一連の騒動で不憫な状況に追い込まれた船越に対してなのか。

 船越は被害者か加害者か。果たして、この勝負に負けたといえるのだろうか。個人的にはダンマリを決め込んだ船越は、饒舌な松居の奇天烈さを悪目立ちさせることに成功したのではないかと思っている。そして、着々と主演ドラマもこなしている。

 今までのバラエティ番組の夫婦出演などでこびりついた「松居棒の夫」というスタンスを、今回卒業するきっかけになった気もしている。

 普段ドラマを観ない人々は船越の横に必ず松居の影を見ていたと思う。ドラマを観る私ですら、船越主演のドラマ『黒い十人の女』(日テレ系)を観ていたとき、どうしても松居の顔がちらついてしまったのだから。

 現在は、『赤ひげ』(NHK BSプレミアム)で無骨な人格者の医師を演じているし、俳優・船越英一郎にとってはマイナスだけじゃなかったようだ。支配と管理からの卒業というか、毒嫁からの卒業というか。「おめでとう」という言葉を、松居にも船越にも捧げたくなる。

 今回は、モヤっとでもイラッとでもない、本当に警戒という意味でのアラートでした。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/