「ちゃんと出てきて謝罪しろ」
横浜市内でその日、被害者への着付けの対応をした「晴れ着の丸昌」には、「はれのひ」の会場だったホテルから連絡があったという。
「他社さんとも連携をとりながら、被害に遭ったお嬢さんたちに対応しました。ここには10人弱の方が訪れました」
と当日の様子を伝える。
「普段どおりの対応をしようと心がけ、ほかのお客様と同じように声をかけたりしました。支度ができると、みなさんホッとしているという感じでしたね。成人式の後に、対応したお嬢さんたちから“ありがとうございました”と声をかけていただきました」
同市の「ふりそでsanQ」でも急きょ、4人の新成人に対応したという。
「みんな泣きながら来店し、“許せない”って言っていました。私たちは“大丈夫だから、ちゃんと着させてあげるから、いい思い出にしてね”って声をかけました。最初は泣いていた女の子たちも、最後には笑顔になっていきました」
被害に遭ったのは今年成人式の女の子たちだけではない。
来年の成人式用に娘(19)の着物の契約をしていた小島慎吾さん(仮名)もその1人。
「娘が自分で選んだ着物、楽しみにしていたことを踏みにじられた怒りがあります。ちゃんと出てきて謝罪をしろ、と言いたいですね」
と逃げ回る篠崎社長へ憤る。支払い額は着物のレンタル代に髪飾りなども購入し30万円弱で、ローンを組んだ。昨年12月に振り袖を着て前撮りをしたが、その際立ち会った母親の真弓さん(仮名)は、おかしな感じを抱いたという。
「料金に含まれている前撮りの枚数は3枚。100枚くらい撮影したし、親としては娘の写真を見たら欲しくなるので10枚ほど追加で購入しました。内金を1万円、残り5万円を振り込みました。12月9日の土曜日に撮影したのですが、振り込みは11日の月曜中と言われ、ずいぶん急かせるなって思ったんですが……」
明治大学専門職大学院の野田稔教授(経営学)は、
「事業は拡大させるときより、苦境に陥ったときにどう企業努力するかがポイントです。社長は今年の成人式はどうにか乗り切らせ、その後は自分の資産で清算するべきでした。消費者の心に寄り添うことを忘れた経営者はひどいことをすると改めて思いました」
篠崎社長は資金繰りがうまくいっていないにもかかわらず横浜の高級タワーマンションに住み、高級外車を乗り回すなど自分だけの“晴れの日”を満喫していた。従業員や取引先も犠牲にしたその代償から逃れることはできない。