1軒目・連続殺人マンション
そこは全国で報道された連続殺人の現場になったマンションだった。部屋は10畳フローリングのワンルームで4万5000円だった。もともとは6万~7万円の値段だったので2万円前後の値下げになる。
「事件直後は2万円まで値段が下がったそうです。4万~5万円の値下げですね。マンション名を変え、エントランスを作り変えて、徐々に値段を上げている最中でした」
その物件はそもそも幽霊マンションと呼ばれている物件だった。空き室が多かったため、犯罪者集団が住み着くこともあったという。
また不法建築の物件だったため、不法部分の8階9階10階部分が閉鎖されていた。それなのに時折、閉鎖部分からエレベーターが降りてくることがあったという。
「治安もあまり良い場所ではなかったですね。家のドアやガスメーターにマークが書かれるんですよ。どうやら泥棒や詐欺師が部屋の情報を書いているらしいんです。あるときは、ガスの点検だと言って部屋に上がりこんで来た人に延々と居座られました」
大きなトラブルがあったワケではないが、どうにも住み心地が悪いマンションだったという。
デメリット:治安が悪く、不法建築
畳をめくると血痕
2軒目・殺人アパート
2軒目の物件は松原さんが自ら不動産業者に足を運んで探したという。
「不動産屋さんに入って『事故物件に住みたいんですけど』というとピリッとした空気になりますね。そこからが戦いです。真剣に事故物件に住みたいんだという気持ちを伝えなければなりません」
不動産業者からは「事故物件はないですよ」と適当に追っ払われることが多かった。数軒目の不動産業者で、はじめて思い当たる物件が3軒あると言われた。
「『事故の内容については漢字2文字でしか言えません』と前置きをされました。
『2万6000円の殺人』
『2万7000円の自殺』
『4万3000円の病死』
の3軒の物件を提示されました」
場所、値段をかんがみて『2万6000円の殺人』の物件を選んだ。
その3軒の物件は都市再生機構(UR)の物件だった。URでは1~2年、家賃が半額に割り引かれる住宅がある。この物件は1年に限り家賃が半額になる物件だったので、月に2万6000円の値下げになる。
「不動産屋さんに話を聞くと、URの事故物件から事故物件へ渡り住んでいる若者が増えているとのことでした」