12年お付き合いさせてもらい感じたのは、笑いの種類、幅がどんどん広がっていることだ。今年の初めNHKで『明日へつなげよう「千原ジュニアがゆく 聞いてけろ おもしぇ〜話」』という番組を観た。
被災地を回り、地元の人たちの面白い話を聞いていくという企画。
かつてジャックナイフと呼ばれた男は、地元でも大人気で、おばちゃんたちがわんさか寄ってくる。それにいい笑顔で対応する。
ジュニア氏を前に、地元の人たちがすべらない話を披露する。次々と爆笑が生まれる。
聞き手としての実力を感じた。「ほうほう」、「それでそれで」と絶妙の合いの手と頷(うなず)き。これで地元の人の舌が滑らかになっていく。
「震災で冷凍庫が壊れ、しまっておいた数の子やアワビを毎日食べていた。自衛隊の人よりいいものばかり食べていて申し訳なかった」
「社長が行方不明になり、自分が社長になる覚悟を決めたら、戻ってきたんですよ」
オチを言うと、ジュニア氏が手を叩いて笑う。「なんチュー話や!」と笑いが止まらない。そして笑った後、心がジーンと温かくなる。人の心に寄り添うとは、一緒に泣くだけではなく、一緒に笑うということなのだろう。
初めて会った時、「この人、優しい人かもしれない」と思ったことを思い出した。
そういえば12年前、ライブ開始10分前、楽屋にカギをかけ、ギリギリまで一緒に落語のおさらいをしたっけ。落語で親子の物語をやったジュニア氏も今や1児の父親になった。
今度、ライブをやる機会があれば、もう一度落語を書いてみたい。
<プロフィール>
樋口卓治(ひぐち・たくじ)
古舘プロジェクト所属。『中居正広の金曜のスマイルたちへ』『ぴったんこカン・カン』『Qさま!!』『ぶっちゃけ寺』『池上彰のニュースそうだったのか!!』などのバラエティー番組を手がける。また小説『ボクの妻と結婚してください。』を上梓し、2016年に織田裕二主演で映画化された。最新刊は『ファミリーラブストーリー』(講談社文庫)。