一方、自分のネタに関しては、また別の面を見せる。

「めちゃくちゃ細かく詰めるんですよ」

 これは別のスタッフの言葉。

 ネタといっても『エンタの神様』(日本テレビ系)でやるような一人コントではない。自分のエピソードトークでも、スタッフと入念に打ち合わせをするという。

「この話はこういうオチをつけようと思ってるんだけど、どう思う?」

「このオチとこのオチ、どっちのほうがいいと思う?」

 こんなことを聞いてくる芸人はなかなかいない。普通は「こういうことを話します」と言われて、それで終わり。だから、こんなふうに意見を求められるのは、スタッフとしてはうれしい。もちろん、スタッフの意見をそのまま採用するわけではない。意見を参考にして、さらにネタをブラッシュアップしていくのだ。これも『DX』での話だが、ギリギリまで粘って、本番では打ち合わせの時とトークの構成やオチを変えてきたこともよくあるそうだ。

 今回、紹介した2つの面は、テレビを見ているだけではさっぱり伝わらないだろう。だが、そこがいいのだ。「こんなに気を使ってます」「こんなに考えています」というのが透けて見えるうちは、まだまだ。そんなふうに見えないのに、陰で実は……というのが、腕ある芸人だと思うのだが、そんなふうに見えないから視聴者から評価されることも少ない。

 そこで陣内智則さんには今回「実はいろいろちゃんとやってますよ!」賞を勝手に差し上げ、「俺の手の内をバラすなよ」と思われるかもしれませんが、勝手に表彰します。

<プロフィール>
山名宏和(やまな・ひろかず)
古舘プロジェクト所属。『行列のできる法律相談所』『ダウンタウンDX』といったバラエティー番組から、『ガイアの夜明け』『未来世紀ジパング』といった経済番組まで、よく言えば幅広く、よく言わなければ節操なく、放送作家として活動中。