バブリーなファッションに身を包み、登美丘高校ダンス部が踊る『ダンシング・ヒーロー』の“バブリーダンス”や、芸人の平野ノラのバブルネタが注目を集め、次期朝ドラ『半分、青い。』も’90年代が舞台。日本中が元気で明るい未来しか見えていなかった’80~’90年代初頭を、モノや流行、出来事などで振り返ると、今の時代が見えてくるーー。
バブルは焦りや渇きから起こった現象
「バブルというのは焦りや渇きのようなものから起こった現象だと思います」
と語るのは、累計30万部のベストセラー『平成ノ歩キ方』(小学館)の著者であり、トレンドウォッチャーとして平成の世を分析してきた木村和久さん(58)。今、再び注目を集めている熱狂の時代が“ある種の渇きからもたらされた”とは、どういうことなのか?
「わかりやすい例でいえば、バブル当時、関東近郊のゴルフ場は2か月前の予約開始日と同時に電話が殺到し、すぐさま埋まってしまう状況でした。何をそんなに急ぐ必要があるんだ? という話です。同様に、誰かが株で儲(もう)かれば自分も買う、BMWに乗っていれば自分も買う、という状況が生まれました。
確かに、あの時代は景気がよかった。ところが、いつの時代も本当に潤うのは一部のお金持ちだけです。いつもより少しお金を持つことができた庶民が“隣の芝生は青い”とばかりに、焦りや渇きから連鎖的に反応を起こしてしまう。そういった大衆心理が働いて、あらゆるものが雪だるま式に膨れ上がっていったのがバブル。
でも、悲しいかな庶民というのは、潤わないがゆえに庶民なのです。あの時代は“もしかしたら自分も”と夢を見ることができたからこそ、狂騒的な世相を作り出した。不動産や株価だけでなく、人の心も膨れ上がってしまったということでしょう」
日本経済は、景気回復が続き、昨年には戦後2番目に長かった『いざなぎ景気』を超えた。そう言われても実感が湧かない人がほとんどだろうが、木村さんは、バブル時代と今は似ていると話す。
「バブル時代に西武グループが君臨していたように、現在は孫さんのソフトバンクや三木谷さんの楽天など、超巨大企業がわれわれの生活に欠かせなくなっている。また、若い世代や主婦が仮想通貨に飛びつく状況は、バブル期の株式投資を彷彿(ほうふつ)とさせますね。ビットコインの値上がりなどは、まさしく焦りや渇きからくるものでは? 前例がないものに対して、人はブレーキの踏み方がわかりません。ですが、バブル体験者ならわかるはず。あの時代を知っているからこそできる、賢い生き方があると思います」
焦りを募らせたとしても、大きく膨らんだ泡は、いずれはじけて消える。同じ過ちを繰り返さないために今、必要なことは?
「当時は今のように選択肢がありませんでした。美味しいイタ飯を食べるなら、身の丈(たけ)に合わない高級なイタリア料理店に行くしかなかった。でも、今はサイゼリヤで十分美味しいパスタが食べられる時代。選択肢が増えたことで、高価すぎる買い物や、無駄な見栄を張ることに固執する必然性がなくなりました。
再びバブリーな時代が訪れたとしても、使い分けができる世の中だからこそ、隣の芝生に感化されない冷静な選択眼を持って、賢く時代を生き抜くことができると思いますね」
<プロフィール>
きむら・かずひさ◎1959年宮城県生まれ。コラムニスト、日本文藝家協会会員。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、その時代のトレンドを読み解くコラムニストとして多方面で活躍。ゴルフやデイトレードにも通じる大人の遊び人。主な著作である『平成ノ歩キ方』は、累計30万部のベストセラー。