「社会的孤立」から逃れるために

 孤独死を語るときに、その前段階である「社会的孤立」について考える必要がある。社会的孤立とは、地縁や血縁、趣味の縁など、さまざまな縁から切り離された状態のこと。現に、ニッセイ基礎研究所の調査によると、友達がいないなどの他者との交流がない『社会的孤立』の割合は、実は、団塊世代以上に比べて、団塊ジュニア世代、ゆとり世代のほうが高いのだ。そう、高橋さんが考えている通り、孤独死は決して高齢者の問題だけに留まらない。

高橋大輔さん(孤独死現場のトイレにて)
高橋大輔さん(孤独死現場のトイレにて)
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 高橋さんが抱える孤独死予備軍としての不安は、団塊ジュニア世代、ゆとり世代では決して珍しい感覚ではないだろう。

「自分自身がそうなんですけど、ちゃんと仕事はしているけど、人間関係が希薄な人って、孤独死予備軍だと思うんです。このままでいいのかな? という僕みたいな漠然とした不安がある人は、できるだけ自分が興味を持てる趣味とか、交流の場に出て人とつながったほうがいいのかなと思いますね。それで、僕自身が危機感を感じているのもあって、ちょっとしたイベントを始めることにしました」

 それは、死について考える、その名も“デス・バー”。バーを貸し切り、お酒を飲みながら、死についてざっくばらんに語らう場だ。今年に入って高橋さんが、仕事関係の有志とともに立ち上げ、自らが主催した。これが地元ではとても好評なのだという。

 まだまだ手探りだが、高橋さん自身、こういったコミュニティーを立ち上げることによって、新たなつながりを模索しようとしている。

【文/菅野久美子(ノンフィクション・ライター)】


<プロフィール>
菅野久美子(かんの・くみこ)
1982年、宮崎県生まれ。ノンフィクション・ライター。最新刊は、『孤独死大国 予備軍1000万人時代のリアル』(双葉社)。著書に『大島てるが案内人 事故物件めぐりをしてきました』(彩図社)などがある。孤独死や特殊清掃の生々しい現場にスポットを当てた、『中年の孤独死が止まらない!』などの記事を『週刊SPA!』『週刊実話ザ・タブー』等、多数の媒体で執筆中。