「原発事故のことは、SNSでは発信できるけれど、普段は聞かれなければ言わない」
放射線の影響を心配していても、口に出しにくい。
「これは私のように避難している人も、できなかった人も、しないと選んだ人も、福島に帰った人も同じだと思う」
土屋さんは原発事故をきっかけに、ほかの社会問題にも関心を持つようになった。
おかしいと思うことに異議を唱えたら、叩かれる。こんな世の中で大丈夫なのかな? まっすぐにそう問いかける。
「避難って言うと、周りは、地震と津波のせいだと思うんです。原発事故にはピンとこないみたい」
とは、いわき市から京都に避難した紺野美月さん(18)。両親は事故後、すれ違いから離婚した。
紺野さんは、「理解してくれない」という言葉を取材中に4度使った。放射能汚染の危険性についてだ。
「きちんと対応してくれれば、みんなが守られるはずだった」
そう言って、福島で暮らす友人にも思いを馳せる。
いまや8割が事故に無関心
一方、福島県内の子どもたちはどうか。
佐藤詩織さん(22)は、3・11が中学校の卒業式だった。
「事故のあと、東京の人は他人事なんだろうな、大人って嫌だなって考えていました」
放射能汚染を「怖い」と思う反面、「そう思わないようにしなきゃ」「高校生活を楽しみたい」と、友達と事故の話をすることはなかった。しかし高校時代、ひとりの先生が甲状腺がんの手術をしたことで、「もし事故の影響だったら」と考え、胸を痛めた。
子どもたちの間で、原発事故への風化が進んでいるという指摘もある。
「県内では、いまや8割が原発事故に無関心ではないか」
と高校教諭の鈴木幸三さん(50)。鈴木さんには許せなかったことがある。