「高校生を廃炉作業中の原発に、視察に連れていった人がいたでしょう。しかも普通の服で。ありえない。私なら、せめて防護服を着させます。正義感が強い子どもたちを悪用している」
この様子は、'16年11月にNHKで放送された。
「われわれ教師には、文科省の放射線教育の副読本から逸脱するなと通達がありました。危険と言ってはいけないという趣旨。そんな空気では、素直な気持ちを出しにくい」
別の高校で教える、渡辺大輔教諭(50代)が続ける。
「いまの高校生は事故当時、まだ小学生。子どもに過剰な不安を与えないように、大人は事故について語ってこなかった面もある。そのため原発事故を外国の話のようにとらえている子どももいる。原発事故という歴史的事実の中にいるのに、子どもの風化は年々、深刻に進んでいます」
渡辺さんが顧問を務める演劇部では今年、原発事故を題材にした劇を演じた。生徒たちは、実感が湧かない事故を必死に学び直したという。
「生徒を見て思ったんです。なぜこの子たちだけが、プレッシャーを感じながら学び直す作業をしなくちゃいけないのか。原発事故は福島県だけの問題じゃないんだから、全国でやりましょうよってね」
モニタリングポスト撤去への違和感
そんな中、福島県内の空間放射線量を測定している放射線監視装置(モニタリングポスト)について、原子力規制委員会は3月20日、原発事故で避難指示が出た12市町村外にある約2400台を'21年3月末までに順次、撤去する方針を決めた。線量が低く安定して推移していることを理由としている。
前出・佐藤さんは、モニタリングポストの撤去を「気持ち悪い」と表現した。違和感がぬぐえないからだ。
郡山市の菅野さくらさん(20代)は、撤去発表の日付まで覚えていた。