最後のポイントは、大量の水で踊るようにゆでること。こうした手間ひまかけた製法へのチェンジは、大量生産の現場では設備投資を伴う大工事になるが、「セブンオリジナル商品は、全国165拠点ある専用工場で作っているので実現できた」という。
結果、「現在のうどんの販売は、前年同期比7割増の爆発的な伸びになっております」(セブン広報)というから、驚異的だ。
ローソンは「女性向け」、ファミマは「地域別メニュー」
もちろん、セブンだけではない。他チェーンも「女性客に人気がある」ことから、うどんには工夫を凝らしている。
「ざるそばが50代以上の方に人気が高いのに比べ、ぶっかけうどんは30~40代女性に特に人気があります。今年は新たに、がっつり食べたい男性向けとして、ちくわ磯辺天を2つ載せた大盛りタイプのうどんや、1食分の野菜を使った『サラダうどん』(5月22日~)なども出します」というのはローソン。
冷し麺はどれも老若男女から支持が厚いが、さらにヘルシーな野菜たっぷりメニューを導入したのは、やはり新規の女性客を意識してのことだろう。
ファミリーマート(以下ファミマ)のうどんも、ひと味違う。
「コシのある太麺で、だしに北海道産真昆布を使いました。スッキリとした甘さの加減が絶妙で、暑い中でも食べやすい風味に仕上がっています」(ファミマ広報)
定番の「冷しぶっかけうどん」(380円)をはじめ、地域別メニューを投入した。全国を以下の4エリアに分け、各地域でなじみのある味付けや具材を使用したうどんを販売中だ。出張時には、地元のファミマに立ち寄ってみたくなる。それも狙いだ。
・中部地方限定・・・冷しきしめん(380円)
・関西・中国・四国地方限定・・・冷し肉ぶっかけうどん(498円)
・九州地方限定・・・冷し肉ごぼう天うどん(430円)
考えてみれば、コンビニが冷しうどんにここまで注力するのは「女性の新規顧客獲得」だけが目的ではないだろう。ドラッグストアや食品スーパーとの中食商戦をにらんでのことだと思う。特に、10兆円超規模になったコンビニ市場を追うドラッグストアの「食」販売へのシフトは目覚ましい。スーパーのように生鮮品を扱ったり、店内にイートインコーナーを設けたりするドラッグストアも出てきた。
だからこそ、弁当・おにぎりや菓子パンなどと比べると、製造・物流・店のオペレーション、すべてのレベルの高さが売り上げやおいしさに反映する「うどん」で、商品開発力を知らしめようというコンビニの狙いが見える。
夏の麺商戦は、例年以上に熱くなりそうだ。
吉岡 秀子(よしおか ひでこ)◎コンビニ記者 関西大学社会学部卒業。会社員生活を経て、フリーライターとして独立。2000年代前半からコンビニ業界に密着した取材を続け、ビジネスや暮らしに役立つコンビニ情報を各メディア、講演などを通じて発信中。