運転手への気遣いを忘れない朝丘さんに、Aさんは心を打たれたという。
彼女が生前、よく足を運んだという『太常うどん銀座本店』のオーナーの川北操氏も朝丘さんをこう偲ぶ。
「本当に優しい方でした。お客さんが呼びかけても、にこやかに笑って軽く手を振ってあげて……。彼女がお店にいると、お客さんがみんな喜んでくれるんですよ」
朝丘さんはアボカドうどんをよく頼んでいたそうで、
「温かいうどんにアボカドをのせたもので、麺を半分くらいにして召し上がっていましたね。娘の真由子さんやお手伝いさん、仕事仲間と来られていました。付き添いの方が彼女の隣に座って、“奥さま、こうじゃないと”と言って、食べ物をひと口サイズに切ってあげていましたね」(川北氏)
古民家を改築したような店内にはピアノが置かれ、不定期でピアノの演奏が行われることも。
日本舞踊だけでなくタップも踊れ、ジャズやシャンソン、歌謡曲も歌う歌手である朝丘さんならではの、周囲を驚かせた“天然サービス”もあった。
「常連のお客さんでピアノを弾かれる方がいるのですが、その方がジャズを弾くと、朝丘さんは踊りながら歌ってくれるんです。500円のうどんを食べていたら、朝丘さんの歌を聴けるのでお客さんは大喜びでしたね。まるで外国のライブハウスみたいでしたよ」(川北氏)
彼女の天真爛漫な笑顔、そして優しさは多くの人の心に残り続けることだろう。