残業代のかわりに基本給の4%にあたる「教職調整額」が支給されるものの、金額にして1日数百円程度。とうてい現状に見合わない。

「まさに定額・働かせ放題。その元凶が給特法です。教育調整額を増やすにしろ、仕事の量を減らすにしろ、対策を打つには実態の把握が必要なのに、労務時間を管理しない法律があるから残業時間が見えなくなった」

「世間の関心の高まりとは裏腹に職員室は無風」と指摘する内田准教授
「世間の関心の高まりとは裏腹に職員室は無風」と指摘する内田准教授
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 と内田准教授は言う。そのため前述のような残業に追われていても、法的には「自発的に好きで居残っている人」(斉藤さん)にされてしまう。管理職は「ほどほどにして帰れ」と言うだけ。タイムカードを使って勤怠管理を行う公立の小中学校は全国で2割強にとどまる。

 根本にある制度から変えなければ──。斉藤さんは給特法の改正を目指し、インターネット上での署名活動を行っている。高プロをめぐって国会が紛糾するにつれ署名の数も増え始め、6月22日時点で1万7365人の賛同者を得ている。SNSで声を上げる教員も少なくない。

 一方、職員室は変わらない。

「職員会議で手を上げて問題点を訴えるのは、僕ひとりだけ。会議のあと、机の上に“本当は自分もそう思っている”と書かれた手紙が置いてあったこともあります。

 みんなが問題だとわかっていながら学校で味方を得づらいのは、労働時間や残業代というものが、自己犠牲をよしとする教師の文化では美しくないことが影響しているんだと思います」(斉藤さん、以下同)

 遅くまで学校に残り、生徒に尽くしてこそ教師。そうした考えは現場に根強く、先生の働き方改革を進めるにあたり大きな壁になっている。

「生徒のためにどうかと考えると、やはり僕も葛藤はあります。教師としてダメなんじゃないかという思いにさいなまれたりもする。

 ただ、学校ではいま、膨大な仕事や部活の負担が重すぎて、肝心の授業は手を抜かざるを得ない状況です。疲弊した職場環境では子どもたちのSOSも見逃してしまう。本来、いちばん力を注がなければならない授業と学級経営を核に、学校教育を見直していかなければならないと考えています

 ブラック残業に目をつぶり続ける限り、そのツケは子どもたちに回される。


〈INFORMATION〉
斉藤さんは長時間労働の改善を目指し、給特法の改正を求める署名活動をインターネット上で展開。以下のURLで賛同者を募っている。
https://www.change.org/p/子どもたちに教育の質を保障する為-ブラック残業の抑制を-教員の残業代ゼロ法-給特法-を改正して下さい