受給開始年齢は70歳に?
「まず検討されるのが、年金の受給開始年齢の引き上げでしょう。すでに法律面での外堀は埋められつつあります。例えば雇用保険。かつては“年金を受給できる65歳からは不要”として64歳までしか加入できなかったものが、昨年1月から65歳以降の人でも加入できるようになりました。
これは、“年金に頼らずにすむよう働けるうちは働いて”という国からのメッセージです。年金受給者が働いた場合、収入しだいで年金が減らされる『在職老齢年金』も、高齢者の働く意欲を損なうとして、廃止することを政府が検討し始めたところです。65歳以降も働ける環境が整えば、現在の年金受給開始年齢も引き上げられるでしょう」
そのXデーは着実に迫りつつある。
「さしあたっては67歳か68歳あたりになるでしょうか。私は、オリンピックに関心が集まる来年あたりから本格的な検討が始まるのではないかとにらんでいます。
自分の意思で受給開始を遅らせて年金額をアップさせる『繰り下げ受給』についても、従来は70歳までしか遅らせることができなかったのが、それ以降の年齢も選べるよう検討されています。
いずれは、受給開始年齢そのものを70歳にすることも視野に入れていることでしょう」
さらにトンデモないプランがある。自民党が6月にまとめた「一億総活躍社会の構築に向けた提言案」によれば、老齢基礎年金の目減りを補うため、高齢者住宅の提供など現物給付を検討するというのだ。
「実現性は低いと思いますが、それだけ財源不足が差し迫っているということ。年金だけでは暮らしていけません、生涯働き続けてくださいというメッセージだと、私はとらえています」
先が見えない年金制度。私たちにできる対策は?
「まず、もらえるはずの年金はきっちりもらうこと。年金記録に保険料未納扱いになっている空白期間がないかチェックしてみましょう。日本年金機構の『ねんきんネット』や年金事務所の窓口で調べられます。
また、年金給付ダウンを見越して、自分でも年金を用意しておくこと。個人年金保険やiDeCo(個人型確定拠出年金)を活用すれば、節税メリットも受けられます。そして、長生きリスクを考えて、心と身体の健康を維持するよう心がけましょう」