後継団体に報復の体力はない
オウムの後継団体としては主流派の『アレフ』、上祐史浩氏が率いる分派の『ひかりの輪』、アレフから分裂した女性元幹部らの新組織『山田らの集団』がある。
麻原死刑囚の刑執行で報復テロを企てるなど暴走する心配はないだろうか。
ジャーナリストの大谷昭宏氏は「後継団体が再びテロを起こす可能性は低い」として次のように話す。
「報復する“体力”が後継団体にはない、と公安当局がみたからこそ死刑を執行したのでしょう。3月の死刑囚移送はメディアに情報をリークし、死刑囚を奪還する体力があるかを見ました。移送日には札幌市内のアレフの施設を公安調査庁が立ち入り検査し、力がないことを見極めました。
ただし、警戒せざるをえないのは、アレフや山田らの集団など教団の流れを継ぐ組織がここにきて力を伸ばしていることです。特にアレフは麻原死刑囚の写真を飾るなど個人崇拝を色濃く出しています。地下鉄サリン事件当時にまだ生まれていなかった若者を取り込まないか、社会全体で注視する必要があります」
団体名を隠して、大学周辺で信者の勧誘活動を行っていた事例もある。かつての教団がそうであったように、若い信者が増えれば力は増す。
大谷氏は、
「若い人にアルバイトをさせて資金を稼がせることはできます。オウムには医者や科学者、弁護士などがいましたが、後継団体の信者はエリートではありません。社会からドロップアウトしたひきこもりが多いんです。おとなしいと考えてもいい。しかし、狂信的なカルト集団の要素が全くないわけではないということを忘れてはいけません」
と指摘する。
オウム死刑囚の遺体は誰がどのように引き取るのか。
法務省によると、死刑囚の遺体の引き取りにはいくつかの決まり事がある。
「まず死刑囚があらかじめ指定した人物に、刑執行後すみやかに連絡します。血縁関係の有無は問いませんので弁護士でも団体の関係者でもかまいません。遺体のまま引き取るか、火葬後の遺骨を引き取るか、希望を聞いてお渡しします。
1番目の人物が引き取りを拒んだ場合、基本的には配偶者、子ども、祖父母、孫、兄弟姉妹と順番に尋ねていきます」(同省担当者)
引き取り手がいないときは各拘置所で火葬し、拘置所が管理する墓地に埋葬する。葬儀は行わず、職員が手を合わせるだけという。引き取りの期限は決まっていない。家族が遠方に住んでいるケースなどもあるからだ。
「ただ、遺体を1か月もそのまま置いておけませんので、その場合は火葬します」(同担当者)