加藤さんは、自宅からふらりと散歩に出ることが多かったらしい。
「挨拶するといつも笑顔で応えてくれるステキな方でした。最後に見たのは3~4年くらい前でしょうか。息子さんと2人で歩いていましたね。元気そうに見えましたけど、すごくやせていたのを覚えています」(近隣住民)
酒もタバコもやらなかった加藤さんだが、近所の寿司店『H』にはよく顔を出した。
「10年くらい前は、月に2~3回ほどご家族で来られていましたね。早い時間に来て、お酒は全然飲んでいませんでした。最近はお店に来ていませんでしたが、ときどき出前を取ることがあって、そのときは必ず鉄火丼を注文してくれました」(『H』の店主)
「父は大岡越前そのものでした」
庶民的で、誰にでも分け隔てなく接した。長男の諒も、優しい父親だったと話す。
「声を荒らげて怒ったことは1度もありません。いい俳優になるということよりも、“人間として上質であること”、“人間として美しい生き方をすること”、“人に恥じない生き方をすること”を常に優先していたんじゃないかと思います。あれだけ嘘がない人はいないですね。
人の悪口を言ったことは1度もなく、常にいい部分を見ていました。だから僕も怒られたことがなかったのかもしれません」
勧善懲悪を貫いた大岡越前の人間性が、加藤さん本人に重なって見える。
「自分のやっていることと役のキャラクターが見事に一致した稀有な例ですよね。いい人の役をやっている人が、本当にいい人とは限らない世界ですから。父は大岡越前そのものでしたよ」(諒)
休みの日には、家族と過ごすことが多かった。
「家族でいる時間をとても大切にしていて、一緒に遊んでくれました。肩車をして家の中を回ってくれたり、庭でかけっこをしたり。京都で撮影があっても週末には必ず帰ってきましたね。
私が3歳のときにコーヒーミルクのCMに出ていました。日本の各地に行ってコーヒーを飲むというCMで、北海道の撮影についていったことがあります。そのときの記憶はまだ残っていますよ」(諒)