「野良猫のいる町が、日本の原風景」
宮本市議が振り返る。
「女性ボランティアが“猫が、猫が……”と悲鳴をあげていたので、行ってみると、本当にむごい殺され方をしていました。市川市には熱心な女性ボランティアがたくさんいらっしゃって、不妊手術活動(地域猫活動)に取り組まれていますので、なんとか私も力になろうと思って」
同市は8年前、野良猫の不妊手術に助成金を出す制度を設けた。地域をあげてかわいそうな野良猫を減らし、地域猫を見守る制度だ。昨年度は236匹が不妊手術を受け、地域猫に認定された。宮本市議は現場に立ち会った後、市環境保全課に一報を入れた。
「動物虐待は県の管轄ですが、今回の2件は把握しています」(市環境保全課)
死んだ子猫には5匹のきょうだいがおり、うち黒猫の1匹は、今回の事件の約1か月前に事故かカラスにでも突つかれたのか、目から血を流して絶命していた。
「丁重に火葬してあげましたけれど、もしかすると、人間の手による可能性もゼロではありません。5月下旬にはこの地域で、別の猫の顔と首の横の皮がペロ~ンと剥がれていることもありました。刃物で切られたんだと思います」
と前出の女性ボランティア。
動物虐待問題に詳しい石井一旭弁護士は、
「飼い猫を殺すと器物損壊にあたり、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料。野良猫を殺せば、動物愛護法違反で2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金。初犯の場合、おおよそ罰金刑になります」
ただし、飼い猫を殺害した場合は、民事訴訟の損害賠償の対象にもなる。
「猫の購入価格や、どのくらい一緒に生活したか、精神的苦痛の度合いにもよりますが、賠償額は慰謝料を含めて多くても数十万円。野良猫の死体などを家に置かれたケースで、民事で精神的苦痛を訴えて慰謝料を請求した事例は聞いたことがありませんが、清掃代は請求できると思います」(石井弁護士)
先の宮本市議は言う。
「野良猫がいない都心部のようなところもありますが、私はあまり好きではないんですね。野良猫がいる町が、日本の原風景のような気がしているんです。人間でもそうですが、障害者やお年寄りのような弱者が生活しやすいところは、一般の方も生活しやすい。同じように、野良猫が生活しやすいところは、住民も生活しやすいと思うんです」
同感である。
(フリーライター山嵜信明と週刊女性取材班)
〈PROFILE〉
やまさき・のぶあき 1959年、佐賀県生まれ。大学卒業後、業界新聞社、編集プロダクションなどを経て、'94年からフリーライター。事件・事故取材を中心にスポーツ、芸能、動物などさまざまな分野で執筆している
※石井一旭弁護士のコメントを一部訂正しました(2018年7月20日20:15)