建設中の新国立競技場

 開催まで2年を切った2020年東京五輪・パラリンピック。ここへきてさらなるほころびが生じ、開催自体に否定的な声もあがっている。

 振り返れば、東京五輪への道は常に波乱含みだった。'13年の9月、招致決定の知らせで日本中はお祭りムードになったものの、膨らみ続ける施工費に新国立競技場のデザイン変更問題が勃発し、おまけに五輪エンブレムの“パクリ”疑惑まで浮上するという始末。

 また最近では、大会ボランティアの条件が物議をかもしている。多言語を話せる、競技について基本的知識があるなど厳しい条件でも無報酬で、宿泊費までも自腹。ネット上では“やりがい搾取”“ブラックなタダ働き”といった批判が飛び交う。

開催期間は40℃超えでも珍しくない可能性も

 なかでも最も不安視されているのが酷暑対策だ。とりわけ炎天下での陸上竸技、特に長時間にわたり競うこととなるマラソン選手の熱中症などが懸念されている。

 東京五輪は2020年7月24日の開会式から8月9日まで、16日間にわたり開催されるが、同時期の今年の最高気温を見てみると、30℃を下回った日はたった4日。

「どうしてわざわざこの時期を選んだのか、と思います」

 と、首をかしげるのは、気象予報士で健康気象アドバイザーの中川祐子さん。

「1964年の東京五輪は、スポーツをするのにベストな時期ということで、10月10日の開会でした。当時の期間中の気温は16~20℃くらい。真夏の開催でいちばん過酷なのは外で竸技する選手ですが、観戦客には高齢者や子どももいます。ボランティアの方たちも大変だと思います

 実は'64年の夏も、猛暑が予想されていた。

「当時、南米ペルー沖から太平洋中央部の赤道域で、海面水温が平年より低くなるラニーニャ現象が起こっていた影響もあり、猛暑となりました。ただ、それでも同年7月、東京の最高気温は29・6℃。今年の夏はラニーニャ現象は起きていませんが、39℃を記録しています。

 この100年で、日本の平均気温は1・19℃上昇したといわれていますが、このままいくと21世紀末には最悪5・4℃上昇するという試算もあるほど。東京の場合、ヒートアイランド現象による気温上昇に加え湿度も高く、40℃超えも珍しくない、なんてことになりかねません