事前の情報収拾が生き残りのカギ
ただ、国も手をこまねいているわけではない。国交省は、五輪の地震対策として、被害想定や身の守り方などをホームページ上で公開。また都も、地震など重大事態での安全確保について話し合う会議を開き、競技会場での実地訓練や、市民向けシンポジウムの開催を検討している。
しかし、
「競技ごと、会場ごとのリスクや対処方法などは記されていません」
と和田さんが指摘するように、まだ検討段階という状況で万全の対策にはほど遠い。
「知っている人とそうではない人の情報格差が被害を生み出します。行ったことのない場所で、どのように避難するかを事前に調べておくことが大事」
例えば、サーフィン会場となる千葉県釣ヶ崎海岸を訪れるなら、当然、津波の可能性も視野に入れ、高台などの避難場所や避難経路を事前にチェックしておくことが望ましいと話す。
また、都内でも地域によって地震への対応が異なるため、エリアごとの情報を収集しておいたほうがいいと言う。木造家屋の密集地帯と、真新しい高層マンションが並ぶ地域では、必要な対策もおのずと変わってくる。
「1981年以降に建てられた住宅やビルは震度6~7の耐震基準を満たし、そう簡単に壊れないので、まずはその場にとどまる。また、ラジオやスマートフォン、防災アプリなどで、都心各地の安全情報や避難情報を把握し、普段から使い慣れておくことが必要です」
ひとりひとりが減災・縮災の意識を高めることが基本と言えそうだが、「本当の防災を試みるには組織的にも資金的にも不十分」と和田さんが分析するように、最終的に観戦客の“自己責任”“自己判断”によるところが大きいというのは、なんとも腑に落ちない。
「昨今、全国の首長会議や内閣府の有識者会議でも議論されている『防災省』ではないですが、2020年を機に、内閣府、消防庁、国土交通省、警察が一体的に動ける組織を作るといった取り組みが必要だと考えます。世紀のイベントを安全に運営するためにも、これまでとは違う災害対策をしてほしいですね」