─中には恋愛の句もありますが、実体験でしょうか?
冨士 誰かになり代わって、短い小説みたいな句を作ることもあるかな。私小説はあまりやらないわね。誰かが憑依(ひょうい)するような感じで、女優の仕事と似ているかもしれない。ただ、「これは本当にあったことね」とわかる句もあるわ。
吉行 実生活ではないとしても、心の中とつながってない句は書きたくないわね。お芝居と似ている。自分じゃない人を演じるけど、自分の気持ちが入らないとダメなのよ。あなたは、いつでもどこでも俳句のことを考えているの?
冨士 考えてないわよ。今はいつもエンゼルスの大谷翔平選手のことを考えているの(笑)。
吉行 大谷選手のことを「マイボーイ」って言って、1句作っていたものね。
冨士 ヤンキース時代に松井選手が満塁ホームランを打ったときも1句作ったわよ。スポーツ観戦が大好きだから。
今の若い俳優さんはみんな芝居が上手
─冨士さんは綾野剛さんもお好きだと聞いたのですが……。
冨士 え~!? そんなことを言った覚えはないのだけれど、綾野剛さんは身体の線がキレイね。色気がある。今の若い俳優さんはみんな芝居が上手。昔の二枚目の俳優さんは二枚目の役しかできなかった。
吉行 私も綾野剛さんの芝居、好きだわ。若い俳優さんは、みんな自然に芝居ができちゃうのがすごいと思う。どんな役でもこなせる人が多い。菅田将暉さんなんて、すごく魅力的だったわ。
冨士 あの人はうまいわね。
吉行 NHKの朝ドラ『ごちそうさん』で一緒だったんだけど、当時はまだ有名でなくて、それでもうまい子だなと思った。でも、女優さんはうまくてイキイキしていても、私生活が影響してダメになるパターンも多い。
冨士 また、時を経て、いい役者になってくることもあるわね。実生活がその人のどう糧になっているかがわかる。
吉行 長い人生だから、どれだけ鮮度を保てるかが勝負ね。
冨士 でもあなたは、いい男といい役柄だったら、役を選ぶタイプだもんね。
吉行 現場にいるときがいちばん居心地がいいの。私自身でいるより誰かの役をやっているほうが落ち着いて、ここが居場所という感じがする。