ふたりの自選3句
吉行和子 俳号・窓烏(まどがらす)
白桃や優柔不断もやさしさか
恋心消えれば他人夾竹桃
魂よ気儘に遊べ鳳仙花
冨士眞奈美 俳号・衾去(きんきょ)
流れ星恋は瞬時の愚なりけり
なにほどの男かおのれ蜆汁
母を拭きし盥の水を打ちにけり
<プロフィール>
吉行和子(よしゆき・かずこ)◎東京生まれ。1957年舞台『アンネの日記』で主演デビュー。1978年『愛の亡霊』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。1984年エッセイ集『どこまで演れば気がすむの』(潮出版社)で、日本エッセイストクラブ賞。2014年『東京家族』で日本アカデミー賞、優秀主演女優賞受賞。
冨士眞奈美(ふじ・まなみ)◎静岡県生まれ。三島北高等学校卒。俳優座付属養成所卒。1956年NHKテレビドラマ『この瞳』で主演デビュー。1957年にはNHKの専属第1号に。出演作はドラマ『細うで繁盛記』、映画『切られ与三郎』『小林多喜二』など。2000年『ろくでなし』(文春文庫)『恋よ恋歌』(中央公論社)など小説を刊行。句集『瀧の裏』(深夜叢書社)を出版。「俳壇賞」選考委員。
(構成/紀和静)