昭和の高度成長期で止まっている家族の価値観
次男が逮捕されたのは、9月11日です。ヨシコが出演する『過保護のカホコ2018〜ラブ&ドリーム〜』(日本テレビ系)の放送予定日は9月19日で、この騒動の余波を受けてお蔵入りかと思われましたが、予定通り放送されました。すでに大女優として数々の代表作を持つヨシコですが、若い世代にとっては、カホコのおばあちゃんとして認知されているかもしれません。
昨年放送された本編では、ホームドラマでありながら、しょうもない女性が複数登場します。娘の自立をはばむ過干渉な母、覚せい剤を使って子どもを捨てた母、他人に対し、愛情を持てないと感じるバツイチ女性。母親の愛は間違うこともある、母だから真人間になれるわけではない、女性だから愛情深いわけではないことを、うまくキャラ分散して描いていると思います。
しかし、ヨシコ演じるばあばは医師に余命宣告されても、「じいじがかわいそうだから」という理由で夫に打ち明けることをしません。それを思いやりだと感じる人もいるでしょうが、大事な問題を打ち明けないのは、じいじを一人前の大人と認めていないからではないでしょうか。「男を家庭に介入させない」ことで女性の負担が増え、結果的に「家族を守れないオンナ」が生まれてしまうのです。
「オンナだったら、家族を守れ」「家族はオンナがまとめるもの」
平成も終わろうとしているのに、家庭に関する価値観は昭和の高度成長期で止まっているのはどうしてなのでしょう。またヨシコが大女優の貫禄で、さらりと「家を守る、強く優しいオンナ」を演じてしまうものだから、「オンナとはそういうもの」というメッセージを視聴者は受け取ってしまう。
絶頂期には「理想の母」とも言われたヨシコ。よき母を演じてしまったがために、そのイメージから逸脱すると叩かれる。女優というのは、つくづく因果な商売だと思わされるのでした。
<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。