それから19年がたった。平成を駆け抜けてきた後藤真希は、来年9月にはデビュー20周年を迎える。

エッセイを出す理由とは

「ときどき思います。人生の半分以上を芸能界で過ごしてきたって、すごいなぁって。例えばサラリーマンはたいてい20歳を超えてから就職しますよね? となると人生の半分をその仕事で過ごすのは40歳を超えてから。でも私は33歳の今、すでに人生の半分以上をここで過ごしているんです」

 そんなこれまでを、彼女は1冊の本にまとめた。タイトルは『今の私は』(小学館)。幼少時からデビューに至るまで、デビューしてから、そして今まで。家族のことや恋愛のことも素直に綴(つづ)った。

自分をもっと知ってもらえる機会があったらいいなぁと思って作りました。世間が思ってる自分と、自分で思う自分はなんともズレていると、ずっと思ってきたんで。

 世間でいう後藤真希、ゴマキのイメージは結構トガってますよね。それは私がトガらせたというよりも、そう盛り上げた世間とメディアがあったんじゃないかと思います」

 テレビ画面の向こうの幼い後藤真希は、歌番組やトーク・バラエティ番組などで戸惑い、どこか居心地悪そうに見えた。どうしたらいいのか分からなかったんだろうが、そういう姿をカメラが捉え、彼女のイメージが勝手に膨らんでいった。

 だって後藤真希だもん、パッと見てすぐに目がいく。目立つ。オーラがある。だから、仕方なかったのかもしれない。

『今の私は』の中にもこんな記述がある。レコーディング風景をモーニング娘。を生んだ番組『ASAYAN』(テレビ東京系)のカメラが追っている場面だ。

――ひとりずつ歌ってから、複数メンバーでの歌を録るのだが、自分が次にいつ呼ばれるかわからない。練習をしながら待機している時間が、とにかく長かった。その間もずっと、『ASAYAN』の番組カメラが密着している。ほかのメンバーは、カメラを向けられるとすぐに、気のきいたコメントを言ったり、笑顔を見せている。すごいな、と思った。その後も、密着カメラに慣れることはなかった。疲れているのに、笑顔なんてできなかった。用意されたコメントを何度も繰り返して言わなきゃいけないときは、ずいぶん不機嫌な態度だったと思う。私は、ただ眠たかった。――(第一章「レコーディング」より)

『ASAYAN』のカメラが追ったレコーディングで、つんく♂さんは超の付くプロフェッショナル、完璧主義で容赦なかった。