家でゴロゴロより働くほうが健康的
前出の八代氏は、
「本当は欧米のように定年制自体を廃止すべきです。そのためには同一労働同一賃金の考え方で例えば40歳以降は給料をフラットにする。また、海外では、一部の社員に十分な補償金を出して解雇する“解雇の金銭解決ルール”も導入されています。こうした事例を取り入れつつ、貴重な高齢人材を活用できる環境を整備することが必要です」
と提案する。
いったい、何歳まで働くことがベストなのだろうか。
「年齢で線引きすることはできません。働きたい人は、働けるうちはなるべく働いてほしい。それが生きがいになり、健康や充実した老後にもつながると思うんです」
と前出・大谷氏。
内閣府の'18年版「高齢社会白書」で、現在仕事をしている8割が高齢期にも高い就業意欲を持っていることがわかった(上表参照)。
「高齢者に働く理由を聞くとトップは『金銭』で、次に挙げられるのは『健康維持』です。金銭は世界各国共通ですが、健康のために働くというのはほかの国にはない日本の特徴です」(前出・八代氏)
1日中、家でゴロゴロして妻に嫌みを言われたり、動かない夫にイライラするより、身体が動く限り働くことは健康面でも精神衛生面でもいいだろう。働けなくなったときに年金に頼れればいいのだが、「最悪のシナリオが用意されている」と前出・大谷氏は言う。
「年金が破綻(はたん)すれば際限なく働くことになります。70歳までの雇用継続どころじゃなくなります」(同) 都合の悪いことから国民の目をそらそうとするのは安倍政治の“お得意パターン”。とはいえ、元気な高齢者が増えている昨今、まだまだ続く長い人生のためと考えて、無理のない範囲で働くほうが幸せなのかもしれない。