“安上がりな被ばく労働者”として扱われ

「専門技術を学びに来ました。除染作業をするなんて聞いていませんでした」

 つたない日本語で懸命に訴えるベトナム人男性のグエンさん(仮名・26)。

 福島県郡山市で建設作業員として働くはずだった彼がやらされたのは除染作業だった。作業に必要な特別教育は一切受けていない。日給は5600円で日本人作業員(平均日給1万6000円以上)の3分の1だ。1年以上にわたり安上がりな被ばく労働者として扱われ、雨天などの休業時は1日分の日給である5600円が引かれた。

 グエンさんは、

「除染作業とわかっていたら日本に来ていません。専門技術を学ばせてください」

 と訴えた。

 黄さんや史さんらは現在岐阜県にある『外国人労働救済支援センター』で支援を受けているが、ほとんどの技能実習生は支援先や制度もわからないまま失踪をとげている。

「本来は労働契約で労働条件、賃金が決まるはずなのに、全然違うところ(技能実習生が知らないところ)で決まっている。ブローカー(悪質な労働者仲介業者)によって契約ががんじがらめになっている。今後どのようにブローカーを排除していくのか」

 と、前出の鳥井氏。外国人労働者受け入れ拡大の課題は山積みで、来年4月からの施行なんてとんでもない話。

 会合後、国民民主党の山井和則衆院議員に話を聞くと、

「政府は目先のことだけしか考えていない。もっと丁寧で慎重な議論が必要です」

 と早急な法改正に待ったをかける。

外国人労働者の受け入れは14業種だけと政府は言いますが、今回の法案では、人手不足ならば上限人数なく全業種の受け入れも可能です。そんなことをしたら外国人と日本人で仕事を奪い合い、賃金が下がりかねない。外国人を受け入れる以上、日本を好きになってもらいたいですよね。

岐阜県で実習生を保護している甄凱さん(右)
岐阜県で実習生を保護している甄凱さん(右)

 今の悪い労働条件のままでは技能実習の外国人はもちろん、日本人だってハッピーじゃない状況。人間らしい働き方ができる環境をきちんと整えて上限人数を設けて外国人を受け入れるべきです」(山井議員)

 さらに、安倍首相の拙速な姿勢を批判した。

「移民国家スイスでは『我々は労働者を求めたが、やってきたのは人間だった』という作家の言葉があります。まさにその通りで、人間としての尊厳がきちんと守られること、これが約束できないのならば私は反対です」