ダンスにのめり込んでいく一方で、勉強は相変わらず好きになれず、「いつまでこんなにつらいことを続けないといけないんだろう」と思っていました。親には「友達の家に泊まる」と嘘をついてディスコで夜通し踊り明かし、学校ではずっと寝ていました。
そんな毎日を送るうち、こう思うようになりました。
「このまま親に言われるまま、勉強を続けて、医学部に行って、医者の道を進むという人生で本当にいいのだろうか」
そして高校2年生の冬、ついに家を飛び出しました。
その頃になると本当に毎晩ディスコに行っていたので、「友達の家に泊まる」とも言えなくなっていて。家族が寝静まるのを待って、2階の自室の窓から家を抜け出してディスコに行き、夜が明ける前にこっそり部屋に戻っていました。
ある朝、いつものように家に戻ろうとすると、リビングに明かりがついていて、「あいつ、いないぞ」と家族が騒いでいるのが聞こえた。「これはもう戻れないぞ」と思い、そのまま家出したんです。その足でなじみのディスコに駆け込み、住み込みのウェイターとして働き始めました。
ほとんど成り行き同然の家出でしたが、僕は、「ダンスをやめさせられるくらいだったら一人で生きていこう」と決意していました。
「真面目にやれ」「てっぺんを目指せ」
「なんでもいいから真面目にやれ」──今も胸に残っている、父の言葉です。
家出から2週間後、あえなく連れ戻された僕は、両親に「どうしてもダンスをやりたい」と伝えました。当然、反対されるだろうと思っていましたが、僕の覚悟が伝わったのか、父は「そんなに言うならやってみろ」と言ってくれたのです。
ただし、こうも言われました。「真面目にやれ」と。
「将来、何になってもいい。ダンサーになろうがなんだろうが、なんだっていい。ただ、やると決めたならとにかく真面目にやれ。大事なのは何をやるかじゃなくて、どれだけ努力できるかだ」
厳格だった父には反発ばかりしていましたが、このときの言葉がきっかけで、「本気でダンスをやろう」と腹をくくることができました。