父親の亡くなった歳を17歳越えたいま、長男が週に1回、長女が週2、3回、実家を訪ねてくる。若いころ、どんな育児をしたのだろうか。
「私が子育ての信条としたのは“手を出すな、口を出すな、目を離すな”です。大阪府寝屋川市で中学1年の男子生徒と女子生徒が夜中に出歩いて殺された事件があったでしょ。あれも親が目を離したから、起こったとですよ。
娘には手を出さんやったですよ。嫁さんにも、もちろん手を出したことはなか。女には手は上げんのが私の性分です。けど、息子には手を出しましたね。やっちゃならんことをしたり、約束を破ったときに。2%は厳しく育てて、あとの98%は優しく育てました。おかげさまで、うちの子は2人ともちゃんと育ってくれました。反抗期もなかった」
カミさんは、そりゃもう別格
夫婦は離ればなれに暮らしている。妻が5年前に家を出てからひとり暮らしだ。
「旅に出ちょっとですよ。“家を出たい”ちゅうて、理由はなんも言わんでね。私に飽きたとじゃなかでしょうか。いまは両親が住んどった実家でひとりで住んどると思います。この5年、1回も会うとらんし、電話もしとらんです。息子や娘が会うとるか、連絡とっとるかも知らん。
ただ、家の鍵は持っちょるから、帰ってきたいときはいつでも帰ってくるとじゃなかですか。もし、帰ってきたら“お帰り”って言いますよ」
2人のなれそめや口説き方を尋ねると、
「それについては、ノーコメント。いまはね。戻ってきたら話してもよかですが、いまは話したくないとです」
しかし、恋愛・夫婦論については一途な性格をのぞかせた。
「子どもも大事、仕事のお客さんも大事、自分も大事。でもカミさんは、そりゃもう別格。総合的に別格も別格。ダントツの1番ですよ(笑)。結婚してから1回も不倫はしとらんし、たとえ酒の席でも、ほかの女性の手は1回も握ったことさえなかとですよ。
結婚前、神戸の鮮魚店で働いていた若いころは、近くの福原で女を買うちょりましたよ。結婚してからは、そういうこともいっさいなかとですよ。ついこの前も、この家に女性が泊まっていって、私が寝袋で寝ているときも、そんなことはなんもなかったぐらいやけん」
ドキッとするエピソードを披瀝すると、被災地ボランティアでのひと幕も……。
「コーヒーは2番目に好きな飲み物でね。1番目はなんちゅうても母乳ですよ(笑)。あげなうまかもんはなか。被災地で75歳の女性に、“飲ませてほしかぁ”ってゆうたら、“もう出ない”って。
“そりゃあ、ダンナが悪か。ちゃんと揉んでやらんけんたい”と言うと、“おじいちゃん、そういうこと言ってくれてうれしい”って言ってたですよ。セクハラになるかもしれんですが、そーゆーことは関係性によるけんですね」