食事のあとは、由布岳の登山道整備に使う網や木製部品を手作りする。木材は車で5分ほど行った海岸で、流木を拾ってきて加工する。作業は午後1~2時まで続いて、そのあとはランチタイム。
「昼飯は抜くときもありますが、食べるときはだいたい食パンですね。地元のスーパーで買った1斤67円のものを2枚ほど、350グラム148円のマーガリンを塗って、トースターで焼いたものを食うちょる。それにインスタントコーヒーです」
あれっ!? 尾畠さん、カタカナの食べ物じゃないですか? そう突っ込むと「あっ、言われてみればそうだね」と愉快そうに笑う。午後は、近くの国道10号線でゴミ拾いのボランティアだ。
「ペットボトル、弁当のカラ箱、紙切れなどを拾って、最高でゴミ袋が13袋になった日も。袋にはマジックで“R10 ○月×日△時□分”って書く。R10は国道10号線って意味です。そう書いてガードレールに結びつけちょくと、国交省が片付けてくれるとですよ。
午後5~6時には晩飯です。食べ終わったら、もう寝るとです。ほら、午前3時に起きるときもありますからね。でも、いまは、マスコミやら役所関係やら、そういう人たちが来るし、電話もあるから、そういうわけにもいきませんけどね」
医者からは「悪いところが3つある」
ベッドも布団も使わず、常に寝袋で睡眠をとる。
身体が資本だ。「医は食にあり、食は農にあり、農は自然に学ぶべし」の言葉を実践しているといい、健康そのもの。生きている5人のきょうだいの中で、ただひとり、糖尿病を煩うことなく、11年間も健康保険証を使っていないという。
「ただ、医者からは悪いところが3つあると言われちょってね。1つ目は顔、2つ目は顔が黒いこと、3つ目は足が短いって(笑い)」
若いころと比べると、世の中、ずいぶん裕福になった。便利にもなった。ただ、それを簡単には享受しない。
「携帯電話は便利でしょうが、私はいらん。子どもがスマホ、テレビゲームなんかを持っていますが、どうでしょうかねぇ。学のある大人がそういうのを作って、子どもを狙って売っていくというやり方は、あんまり褒められたことじゃないと思うとですけどね。
親が連絡や防犯のためスマホを持たせているという話をよく聞きますが、よけいに問題になっとる気がするとですよ」