応援される人の多くが持っているのは、「謙虚であり、素直に感情表現でき、周囲の人々に感謝できる」という人間性。また、周囲の人々に、「これがしたい」「こうなりたい」という思いと、それに向けた行動を穏やかに語れる人が応援されやすい傾向があります。
しかし、坂口杏里さんは復帰宣言に対する批判コメントに、「自分のやりたい事、目標を書いて何がいけないのかな? みなさんは私の何がわかるんですか?」「マスコミは、そんな批判されていますっていう芸能ニュースしか書く暇しかないんですか?」などと書き込んでしまいました。
その言動は「応援してもらえる人」のものか
「批判する人は応援してくれる人ではない」「だから言い返してもいい」と思いたい気持ちはわかりますが、不特定多数の人々が見られるネット上でこのような感情的な言動をすると、現在応援している人やこれから応援してくれるかもしれない人の信頼を損ねるだけ。言い換えれば、これから消費してもらう可能性のある人々への言葉としては不適切でした。
復帰宣言をしたり、バンドを組もうとしたり、「手っ取り早く話題を集めようとする、お金を稼ごうとする」のではなく、時間と労力をかけた地道な努力を継続的に伝えていかなければ、今以上に応援してもらうことは難しいでしょう。
これはビジネスパーソンもまったく同じ。たとえば、フェイスブックやツイッターなどでこのような感情的な言動をする人は、友人となっている人々から応援してもらうことが徐々に難しくなっていくでしょう。
「自分らしく」「自分の気持ちに正直でありたい」という気持ちから喜怒哀楽の多くをつづってしまう人をよく見かけますが、“思いを伝えること”と“感情をぶつけること”は、まったく異なるもの。書き込む前に、「応援してもらえる人でいるために、このフレーズはどうなのか?」を自分に問いかけたいところです。
前述したように、坂口杏里さんが大人の女性である以上、その言動による苦境は自己責任であり、自業自得のところがありますし、事実として事件や舞台のドタキャン騒動などもありました。しかし、だからといって「見ず知らずの人々からバッシングを受けなければいけない」というわけではありません。
叩く必要がないほど追い込まれている
消費される人生を歩み続けてきた結果、自らの力では立て直すことが難しくなった現在の坂口杏里さんは、「未成熟でも、スキルがなくても、やり方が間違っていたとしても、それでも前を向くしかない」という状態。すでに叩く必要がないほど追い込まれているだけに、もがきながらも前へ歩く姿を温かく見届けられる世の中になってほしいものです。
彼女はイベントを終えたあとのインスタグラムに、
「私の母が亡くなりもう5年は経つんですが亡くなってから私の人生がはちゃめちゃになってしまったり。本当に目標も何もなくちゅうぶらりんでした。
でも凄く今、芸能復帰への気持ちしかなく、やっと、本当にやっと目標ができ、それに向けマイナスからのスタートで、私があやまちをおかしたりしても10代のころのファンの方々が見に来てくださったり 今日でファンになった!って言ってくれた方もいたり。
この企画を作ってくれた、ろくでもない夜の方、その他芸能関係の方に私は変わった、と思われるような遡行をしていきたいです」
とコメントしました。
さらに15日のツイッターでは、「指折り数えてたらもう夜のお仕事卒業が迫ってます……長く長く夜の世界で働いていたからなんだか寂しいようでけど自分の決めた道に進むので応援していただけたらありがたいです!!」とポジティブにつづっていました。
芸能界復帰への道は誰がどう考えても、簡単なものではないでしょう。だからこそ坂口杏里さんが、最終的に芸能人ではなく一般人に落ち着いたとしても、「消費されない一人の女性になる」ことを同じ一人の人間として応援したいと思っています。
木村 隆志(きむら たかし)コラムニスト、人間関係コンサルタント、テレビ解説者。テレビ、ドラマ、タレントを専門テーマに、メディア出演やコラム執筆を重ねるほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーとしても活動。さらに、独自のコミュニケーション理論をベースにした人間関係コンサルタントとして、1万人超の対人相談に乗っている。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』(TAC出版)など。