褒め言葉を信じてみる『のせられ力』
私は根が小心者だから、褒められたり、おだてられたりすると、つい調子に乗って引き受けちゃうのね。『全国マン・チン分布考』という本の帯文を依頼されたときも、「阿川さんにぜひ」と言われて。女性と男性の秘部の名称について、学術的によく取材してあるなぁと本当に感心したので、引き受けてしまいました。
ドラマ『陸王』の出演を引き受けたときは、ほかの仕事とのスケジュール調整が大変でねぇ。アシスタントは泣くわ、担当編集者は機嫌悪くなるわ(笑)。その対応だけでヘトヘトになってたから、撮影現場は楽に感じられるぐらいでした。
役者さんの力を現場で目の当たりにしたのも、いい経験だったし。やってるときは大変でも、のど元すぎりゃ、よかったと思えるものなんですよ。
その場しのぎでもなんとかする『やりくり力』
先日、5か月半ぶりに美容院に行きましたが、普段は自分で髪を切っています。美容院ってけっこう時間とられるでしょ。カットやカラーリングの最中、仕事の資料を読もうとしても、老眼だから眼鏡なしでは見えないしねぇ。
親の介護を始めたときに時間を節約したくて、鼻毛切りでちょいちょいと髪を切ってみたらなんとかなったので、それ以来、自分で切るようになったんです。
その場しのぎでなんとかするのが私のやり方。原稿の締め切りが重なって「無理だよ」と思うときは、とりあえずいちばん短いものからやっつける。
1本仕上げれば、達成感があって次に進めるんですよ。そうやってその場をしのいでしのいで、今にいたるという感じですかね。
つらい状況も楽にする『笑っちゃう力』
実は私、更年期障害の時期、けっこうつらかったんです。突然イライラしたり、泣き出したりすることも多くて。いちばんひどかったのはホットフラッシュ。
テレビ局でメイクをしている最中に、締め切りが延ばせないという連絡が入ったとたんに、ぐわぁぁって体温が上がって、「目玉焼きが焼けそうです」と言われるくらい頭が熱くなっちゃったこともありました。そうなると、髪もお化粧もぐっちゃぐちゃだし、症状がおさまるまで待つしかない。
こんな状態では「仕事は続けられない」と思いつめたこともありますよ。『うから はらから』という小説は連載途中で、「更年期でつらいから書けない」と担当編集者に訴えたら、「じゃあ、それをテーマにしましょう」と言われて。登場人物が更年期で苦しんでるという設定にして、なんとか物語を展開させて、乗り切りました。
自分をネタに笑っちゃうと少し楽になれるというのはありますね。突然泣いてる私って、ほかの人から見たらおかしいよなぁなんて思いながら、よく泣きながら笑ってました。自分はつらいと思うことでも、角度を変えてみると、笑い話だねってこと、けっこうあるもんですよ。