私はNPO法人などで、発達障害の方たちの余暇活動を支援しています。その活動のなかで「黒ひげ危機一発」で遊んだときのエピソードを紹介しましょう。

「黒ひげ危機一発」を使って、自閉スペクトラム症の子どもたちが、ユニークな遊び方をしていたことがあります。ひとりずつ順番に剣を刺すのではなく、ひとりが剣を刺し続け、人形が飛び出したら次の子に渡すという遊び方です。

 一般的な遊び方は「誰が刺したときに、黒ひげが飛び出すだろうか?」というスリルを共有することですが、その子たちにとっては、ほかの子とスリルを共有することは二の次だったのです。ひとりだけが剣を刺している間、まわりではそれぞれが好きなことをして、別の遊びを楽しんでいました。

 でも、子どもたちは「みんなで『黒ひげ危機一発』ゲームをして楽しかった!」と語り合っていたのが印象的です。

発達障害とマイノリティ問題

 では、「黒ひげ危機一発」のユニークな遊び方をしているときに、ひとりだけ「みんなで順番に剣を刺そうよ!」と提案する子がいたとしたら……その子は、居心地が悪かったかもしれません。なぜなら、ユニークな遊び方をしている場面では、一般的な遊び方のほうが少数派だからです。

 私は、発達障害の人が向き合う困難は、社会のなかで少数派であること、つまり「マイノリティ問題」と共通していると考えています。

 人種や民族、性的志向などの少数派(マイノリティ)といわれる人たちは、偏見や差別の目にさらされることがあります。

 では、なぜ偏見や差別が生じるのかというと、マイノリティの人たちがマジョリティ(多数派)を知るほどには、マジョリティはマイノリティのことを知らないからです。