葬儀の形式にこだわりがなくなり自由になってきた

 果たして、増える孤独死と簡素化する葬儀をどう捉えたらいいのか。女性ひとり暮らしの老後を支援するNPO法人SSSネットワークの代表であり、『老後ひとりぼっち』『長生き地獄』(ともにSBクリエイティブ)などの著書があるノンフィクション作家の松原惇子さんは「長生き時代の葬儀は変容している。直葬や家族葬は増えていくだろう」と予測する。

今はお金をかけられない、かけたくないという理由から、葬式をしなきゃ、お墓を持たなきゃ、という意識がなくなってきているんだと思います。日本人は形式にこだわるけれど、自由になってきたとも言えるんじゃないでしょうか。遺骨の受け取り拒否が増加していることはとても悲しいことですが、ある意味、その人が家族とどういう関係を築いて、どう生きてきたかを表しているのでは」(松原さん)

 ひとり身の人にとって、死んでから後のことは不安の種だ。SSSネットワークでは、シングル女性会員からの「最後に眠る場所が決まると安心」という声を聞き、2000年に「女性のための共同墓」をバラの霊園・府中ふれあいパークの中に建立した。その後、「火葬は誰に頼めばいいのか、納骨は誰にお願いしたらいいのか」との声を受け、2013年から直葬プランを共同墓とセットで提供している。年に一度、共同墓で行っている追悼会では、その年に亡くなった会員を追悼するとともに、ワインを飲みながら仲間同士が語らうという。

府中ふれあいパークにある「女性のための共同墓」写真提供/SSSネットワーク
府中ふれあいパークにある「女性のための共同墓」写真提供/SSSネットワーク
【写真】SSSネットワークの「女性のための共同墓」、追悼会の様子

 孤独死が増加していく今後は、ひとり身の人の要望に応える葬儀の形態やサービスが必要になってくるだろう。

近所に友人がいない高齢者が増加

 また、松原さんは、「ひとりの老後に一番大切なのは、仲間をつくること」と話す。元気なうちから気のおけない友達と信頼関係を築いておくと、生活の困りごとを助け合うことができるからだ。

 近藤さんも、孤独死の予防にはご近所づきあいを含めたコミュニティ作りが最も大切だと語る。

「ティアでは会員さん向けにサロンを開いてフラワーアレンジメントや脳トレなどの無料コミュニティイベントをやっているのですが、それは孤独死予防のための企業活動でもあります。サロンにいらっしゃる高齢者の方とお話しすると、お友達が近所にいないという方がいっぱいいます。サロンが楽しければ元気になるし、お友達ができれば、自宅じゃなくても外でお茶してくれるかもしれないですから」(近藤さん)

 ただ、サロンや葬儀の勉強会などの参加者は、女性が大半だという。「女性に比べて男性は外に出て行きにくく、高齢で一人になると周りとの関係が途絶えていく傾向がありますし、あまり自分の病気についても周囲に話したがらないと感じます。男性は自分の死を現実的に考えるのが苦手なのではないかと思います」と近藤さん。

共同墓で行っている追悼会の様子 写真提供/SSSネットワーク
共同墓で行っている追悼会の様子 写真提供/SSSネットワーク

 結婚していても離婚や別居でひとりになることはあるし、若くても年をとっていても、突然死を迎えることもある。私たちは誰でも孤独死を迎えるリスクがある。「その時」のために、自分がしておくべきこと、関係を育んでおくべき身近な人について考える必要があるのではないだろうか。

(取材・文/小新井知子)