「シュミレイションなんか誰にもされたくないね」「だけど僕は君に逢うまであきらめない」……あの『can do! can go!』の歌詞に込められていたのは、今振り返ると、仕事、家庭、あるいは介護と人生の大きな選択を迫られる年齢になった私たちにとって、もう遠い存在になろうとしていた10代のひたむきさ。そしてそこにある、純真ゆえの強さだったようにも思えました。
そんなメッセージ性の強い楽曲を、芸能人生のラストソングに選んだ滝沢さん。また、同時に隣でジャニーズ人生のラストソングとして歌っていた今井翼さん。さらに二人の出発を同じ場所で見送っていた嵐や関ジャニ∞、現在はソロで活動するFour Tops(山下智久、生田斗真、風間俊介、長谷川純)の面々。
彼らにはその歌詞の眩しさが、一体どう映っていたのでしょうか。
そして同じくお茶の間で見ていた同世代の視聴者からすれば、笑顔で彩られたその旅立ちは「それぞれの決断の意味を言葉なくとも感じ取り、静かに受け入れていく」という、30代の私たちがいま向き合い始めたリアリティ……。なんだか、それをそのまま映し出しているようにも見えたのです。
最後に訪れるカタルシスとは
同世代のアイドルの姿に思わず自分の20年も振り返り、大号泣してしまった30代。
しかし同時に救われる思いがあったのは、まさにこの『can do! can go!』が、最後に「僕等は新しい世界へゆこう」というごく前向きなフレーズでフィナーレを迎えているということでした。
30代は、人生の様々なターニングポイントがやってくるタイミング。でも、その中でも私たちは、若さに委ねないこれからの「新しい世界」を、まだまだ創造していくエネルギーがあるのかもしれません。
そんなことを曲終わりに気づくと、涙は止まり、そして心に溜まっていたものがいつしか洗い流されて、なんだか気持ちはスッキリとしていました。
ファンではなくても、やっぱり特別な思いで見てしまう、同世代のアイドルたち。立つステージは違っても、よりたくましく、より自由に。これからの人生もどうか実りある形で、歩んでいてほしいなと思います。
乗田綾子(のりた・あやこ)◎フリーライター。1983年生まれ。神奈川県横浜市出身、15歳から北海道に移住。筆名・小娘で、2012年にブログ『小娘のつれづれ』をスタートし、アイドルや音楽を中心に執筆。現在はフリーライターとして著書『SMAPと、とあるファンの物語』(双葉社)を出版している他、雑誌『月刊エンタメ』『EX大衆』『CDジャーナル』などでも執筆。Twitter/ @drifter_2181