マナーではなく型にこだわるのは危険!

 なぜ、「謎マナー」は生まれてしまうのか? その原因を西出さんはこう考察する。

マナーで大事なのは想像力です。相手、シチュエーションによって臨機応変にどう対応すべきか想像する。でも、想像力を働かせるのが苦手なのが日本人。だから、まずは型を作ろうとしてしまうんです。型に合わせていれば、考えなくていいので楽ですよね。『昔はこうだったから』という時代にそぐわない根拠が、謎マナーを次々と生み出してしまうのではないでしょうか」(西出さん)

 インバウンド客が増え、東京オリンピックの開催も控えた今こそ、日本人の思考の転換期ともいえるのではないだろうか。例えば、イスラム教徒の男性は室内でも帽子をかぶっているが、「室内では帽子を取るのが礼儀」と型にこだわって脱帽を強制するのはどうだろう。つまり、日本人がこだわっているのは、マナーではなく型のほうなのだ。

「日本は“礼儀の国”と言われていますが、決してそうとは言い切れないと思います。ただ、お行儀がいいだけ。お行儀って型ですよね。お行儀とマナー、すなわち礼儀は違うものですから」(西出さん)

 マナーは想像力を働かせることが重要。たくさんの人が共存する現代で、いまだにマナーを◯か×かで考えている日本は時代と逆行している。

 そんな“マナー後進国”だからこそ、「とっくりでのお酌は注ぎ口を使ってはいけない」のような謎マナーが脚光を浴びてしまうのかもしれない。

(取材・文/寺西ジャジューカ)