デビュー、あのヒット曲をあらためて振り返る
2000年2月2日。デビューの日には、どんなことを考えていた?
「とにかく自分のCDを出させてもらえることがうれしくて、すごく楽しみで。憧れでしたから」
実際に、レコード屋さんに確認しに行ったと、その日を懐かしむ。
「当時、“コロムビアレコード90周年記念アーティスト”、“北野武監督命名”という2つの冠があって。力を入れてもらいましたよね。“それにどう応えよう” “結果を出さないといけない”という気持ちは大きかったです」
ビートたけし&志村けんがMCを務める『神出鬼没!タケシムケン』('99〜'00年、テレビ朝日系)への出演を機に、デビュー曲『箱根八里の半次郎』はバカ売れ。コロムビアレコードでは“CDが足りない!”と、大騒ぎになったという。
「『箱根八里の半次郎』をいただいたとき? “やだねったらやだね”がかわいいなと思いました。
ただデビュー前は、ちょっとおしゃれな歌がいいなぁと思っていたんですよ。まだ22歳だったので“シャレてる”って言われたくて(笑)。だから“股旅でいくよ”と聞かされたときは戸惑いましたね」
時代劇に触れたことのなかったきよしくんは、ひたすらその世界観を勉強した。
「義理と人情。お世話になった人に尽くす礼。真心、そして優しさ。人間にとって大切なものが、股旅には詰まっている。すごくステキな世界を知りました」
そのスピリットは、現在のきよしくんが大切にしているものばかり。新人ながら異例のミリオンヒットを達成したきよしくんは、一気にスターの仲間入り。しかしシンデレラボーイは、やっかまれることもあった。
「“やだねったらやだねで終わる”とか“一発屋”とか、とにかく言われましたね。“頑張ります”としか言えませんでした」
セカンドシングル『大井追っかけ音次郎』も110万枚を売り上げ、2年連続で『NHK紅白歌合戦』に出場。最高瞬間視聴率は52・4%で、ケミストリーとともに瞬間最高視聴率獲得歌手となった。
「うれしさ以上に、すごいプレッシャーを感じてしまって。“ちゃんとした氷川きよしでいないといけない”という焦りを感じた年でもありました」