杏里が大切にすべきだった“縁”

 誰かと言うと、俳優・坂上忍です。芸能界一売れていると言っても過言ではない坂上と、良子さんはかつて共演した経験があり、良子さんにとてもよくしてもらったといろいろな番組で話しています。『バイキング』で坂上が語ったところによると、良子さんに「娘をよろしく」と頼まれていたこともあって、坂上は杏里を食事に誘ったそうですが、お説教されるとでも思ったのでしょうか、杏里はすぐに返信しなかったそうです。

 会社員と違って、芸能人のようにオファーがあって初めて成立する仕事では、人気のある人や力のある人の前で自分をアピールすることは重要な活動の一つです。芸能界の大先輩にして売れっ子の坂上が、亡き良子さんとの義理を果たさんとスケジュールを割く覚悟で声をかけてくれた以上、杏里も本心はさておき、芸能人として「ありがとうございます」と頭を下げるべきだったのではないでしょうか。

 ちなみに、坂上自身も子役時代にいきなり役に恵まれたわけではなく、オーディションに落ちまくった経験があるそうですが、あるディレクターが自分を拾ってくれて、そこからずっと使い続けてくれたと話していました。もちろん実力があるからこそ仕事の依頼が続いたのでしょうが、会社員と違って、こういう小さな出会いや縁が命運を分けるのが人気商売ではないでしょうか。

 良子さんが子役である坂上をかわいがっても、仕事が増えるわけでもなく、メリットは何もありません。にもかかわらず、そうしたのはそれが良子さんのお人柄で、それがわかっているからこそ、坂上も良子さんの頼みを聞き入れたいと思ったのではないでしょうか。

 お母さんがかわいがっていた人が、自分が売り出し中の時とほぼ同じくして、芸能界の頂点に立っている。それをお母さんがくれたチャンスと思えないのなら、頭を下げられないのだとしたら、杏里はお騒がせヤバ女のまま終わってしまうように思えてなりません。


プロフィール
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」。