給料を管理しているのは友加被告で、Aさんは小遣いをもらっていなかった。友加被告は「消費者金融でキャッシングしたお金ならば即日返済しないと」と思って取り上げることに必死になり、大生受刑者に手伝うように頼んだという。
1審判決は、
《友加被告は車内で夫の上半身の上に座り押さえつけ、その背部を傘の先端などで突くなどの暴行を加えた。また、長男はうつ伏せ状態の父親の背部を膝で蹴り、頭部を足で踏みつけるなどの暴行を加え、背部の上に座って父親を押さえつけた。被害者の死因は胸郭などの圧迫による窒息死》
と事実認定している。
大生受刑者は昨年7月13日、1審で懲役3年の判決を受けて控訴せず現在、服役中だ。友加被告は同年9月4日の懲役6年の判決を不服として控訴審に進んでいた。
控訴審の主な争点は、友加被告が犯行を主導したのかどうか。判決は、事件後に友加被告がAさんの実家側に200万円の示談金を払っていることから「1審判決は重すぎる」と認めた。ただ、友加被告の主犯扱いは変わらなかった。
友加被告は、
「長男の証言が信用されて私が何十回もボカスカ殴ったことにされてしまいました。長男を事件に巻き込んでしまったことは後悔していますが、キレて夫の顔を蹴ったりジャンプしてプロレス技のようなひざ蹴りをしたのは長男です。主に暴力をふるったほうよりも、そうでない私のほうが重い罪というのはおかしい」
と納得できずにいる。
友加被告は大生受刑者に対し、夫からお金を取るのを手伝ってほしいと頼んだだけで、「羽交い締めにしてくれとも、暴行を加えてくれとも指示していない」と言うのだ。
なぜ、家族は転落したのか。
妻は何度も警察署に呼ばれた
一家は友加被告とAさん、4男1女の7人家族。板橋区の一軒家で暮らしていた。Aさんは運送会社のトラックドライバーで最高年収は約1000万円。比較的余裕のある生活を送っていた。
しかし、リーマン・ショックの影響もあって会社の業績は悪化し、2012年にはボーナスをカットされるなど年収が約300万円減った。家族旅行に行く余裕はなくなり、平穏な日々が狂い始めた。
「夫は会社に内緒で夜間に副業を始め、それがバレて正社員から嘱託社員に格下げ。たびたび交通事故を起こして'16年に解雇され、昼と夜のアルバイトを掛け持ちするようになりました」と友加被告。