「事故のひとつと考えるしかないですね。勉強したともいえますが、授業料は高くつきました。でも、早く忘れたい。忘れるためには、笑い話にするのがいちばんいい方法だと思うんです。“バカだろう、俺って”と言っているほうが、自分の傷が癒えるのが早いと思うんです」
オレオレ詐欺の撲滅には時間がかかる。被害に遭った斎藤は、これから被害に遭うかもしれない人に向けて、次のように締めくくった。
「被害に遭わないように、用心してくださいとしか言えませんが、もし被害に遭っても、いつまでも悔やまない、思い詰めないほうがいいと思います。
私は加害者にならなくてよかった。被害者でよかったと思っています。そのほうが逃げ場があるじゃないですか。金額の大小じゃなく、ケガをさせられたり殺されたりじゃなく、お金ですむ話でよかったと、自分を納得させるしかないと思う」
インタビュー終盤には笑顔も見せた斎藤だが、その奥にはやはり、本物の詐欺の前では無力でしかなかった悔しさをのぞかせていた─。